迷馬の隠れ家〜別館:ブルマガバックナンバー〜

こちらは、2019年まで展開していた“ニコニコブロマガ”の保管庫です。

正しく“馬”を止めるには?

昨日TwitterのTL上で、乗馬施設から逃げたシマウマを、近所のゴルフ上で捕獲したが、麻酔を使った上で池で溺れて死んだというニュースで、様々な意見が飛び交ってたが、そもそも論として、シマウマに限らず、大型草食家畜が脱走するということは、管理者自身の家畜に対する接し方がマズい訳であり、また、捕獲の際に麻酔銃を使ったり吹き矢で麻酔を打ち込むにしても、適正量以上使えば事故につながることぐらい、獣医師や動物園関係者なら察しがつくモノ。いろんな意味で、シマウマにとって、これほど不幸な話はない。
さて…万が一、家畜が脱走した場合、どうすれば安全に、かつ、家畜脱走を起因とする多重事故をを防ぐことができるかといえば、基本的な話としては、家畜自身が備え持つ“能力”を使うことと、それを正しく理解することが重要である。もっと言えば、先ほども書いたが、家畜が脱走しないようにすることこそ肝心な部分であって、そのための牧柵や厩舎の作りでなければいけない。ただ…中には身体能力が桁外れな個体もいるから一概には言えないものの、基本的には飼い主(=管理者)と家畜の間に信頼関係を築く事が先決であり、特に馬の場合、キチンと信頼関係を築く事ができれば、犬以上に従順で、仔馬はともかく躾が行き届いてると、自分の意思で、しかも自力で厩舎に帰ってくる。
馬は基本、人間の態度をよく観察してる動物故に、どうすれば人間の手を煩わせずに済むか、人間を自分の思い通り動かすにするにはどうしたら良いかを常に考えている。だから馴致の際、鞍や馬銜をいきなり取り付けるのではなく、少しずつ馴染ませることから始める訳であり、競走馬として育成する場合は、いかに早く走るかを教わる訳であり、普通の乗用馬の場合は、いかに鞍上の指示に従って動くかを学ばす訳である。馬車やそりを牽引するばん馬もまた然り。だから、アメリカの某ビール会社のCMで、クライスデール(馬車牽引用の重種馬)が生き別れになった産みの親(と言うか、牧場主)の下へと猛ダッシュする…というひとコマが作れた訳であり、その牧場主が両手を広げると、手前で急停止したのは、馬自体がそれを“止まれ”という合図として認知してたからこそできた訳である。
ここが重要な部分。競馬でもレース前に騎手を振り落として競走馬が暴走する事があるんだが、競馬場では大概の場合、レース発走までに当該馬を捕獲する必要がある。が、基本は疲れるまで走らせる方が、安全に捕獲できる訳で、逃げて暴走した馬とて、気分が晴れれば勝手に止まる。問題は、パドックからの移動時や、落馬事故で怪我した騎手を救急搬送する際に、車両進入用の通用門を開けた場合である。実は時々、ここから馬が逃げ出す事がある。つい2、3年ほど前に阪神競馬場から障害レースで起きた落馬事故で怪我した騎手を、西宮か宝塚の病院に搬送しようと救急車を場内に入れた隙に、2頭の競走馬が逃げ出して騒然となったケースがあったんだが、ちょうど、競馬場に向かう途中の調教師がトコトコと中国道インターチェンジに向かってる2頭を発見し、その場で捕獲した…なんてのがあった。この際も実は、調教師の判断で、馬の前に立って両手を広げたからこそ、そこで止める事ができたのである。これも調教の際に、“合図”として教えてたから止まる事ができた訳であり、レース後におよそ800mも緩い上り坂を走れば、大概の馬は疲れる訳で、あとは低速になったトコを頭絡、あるいは手綱を引けば、安全に捕縛する事ができる訳である。
ともかく、相手は大きくても、所詮は家畜である以上、逃がさないように管理するのは、飼い主としての責任であり、義務なのです。