迷馬の隠れ家〜別館:ブルマガバックナンバー〜

こちらは、2019年まで展開していた“ニコニコブロマガ”の保管庫です。

軽種と重種の“違い”ってわかります?

帯広市内中心部で、現在、“馬車BAR”なるモノが期間・日時限定で運行してるそうで、観光客とかには好評とのこと…そもそもは、ばんえい競馬のPRも兼ねてやっているとのことで、馬車を牽引してるのも、ばんえい競馬で実際に活躍してた重種馬(馬体からして、恐らくは半血種)である。しかし、SNS上では“馬車馬可哀想”という意見が散見される。あの…普通の競走馬や乗用馬(サラブレッドやアラブ等)だったらわかるが、大型の馬車を牽引する馬は、クライスデールやシャイヤー、ペルシュロンといった、馬体重が1t以上にもなるような大型種…畜産用語で“重種馬”に分類される品種は、ニュース映像程度のモノだと、1頭牽引でも余裕なんですけど…w


以前にも解説したかとは思うんだが、いわゆる“馬車馬”になる品種は、貨物輸送がメインだと大型種が一般的で、軽種馬サラブレッドやアラブ、アハルテケ等の馬体重が500kg前後の品種は、そもそも馬車の牽引には向かない。本来の活用形態としては、バイクと同じだ。また、食用に向いてるのが重種馬であり、もともと、十勝地方の馬産は食肉用重種馬がメインだったのを、北海道開拓の象徴として“輓馬文化”を残そう…ってことで、岩見沢や北見、旭川と一緒になってやってたんが、世界で、おそらく唯一の“牽引競馬”である“ばんえい競馬”であり、経営難で他場が撤退する中、唯一残ったのが帯広競馬場だっただけの話である。言い方を変えると、ばんえい競馬のある種の“馬産地競馬”なのである。


もちろん、サラブレッドやアラブといった軽種馬でも馬車を牽引すること自体、調教次第ではできなくはないが、牽引は重種馬に比べると非力である。故に、軽種馬が牽引する馬車は4頭以上の“多頭立て”になりやすく、宮内庁で使用されているお召し馬車(大使伝達式等で使用されるアレ)も、那須の御用牧場で飼育されてるアングロアラブを馬車牽引用として調教してあるモノである。貨物輸送ではなく、旅客輸送で高速移動の手立てとして使うための多頭立てであり、馬術競技にも4頭立て馬車によるハンドリング競技がある。実は、多頭立て馬車の方が操作技術的に難易度が高く、熟練された腕でないと、速度調整もできない代物になる。だから、馬車の運用は基本、1頭牽引の方が扱いやすく、観光農園やテーマパーク(ハウステンボス明治村ノーザンホースパークなど)、一部の競馬場で運用される馬車の多くが1頭での牽引なのは、車両重量が軽いのはともかく、操作が安易であることが大きいのである。また、使用する馬の品種も、先述どおり、重種馬であることが多いのは、速度を必要としない運用であるからだ。


あ、ちなみに…ポニーでも馬車を牽引する場合があるのだが、運用としては農家のトラクターヘッド(耕作機牽引のアレ)同様に、鍬や牧草フォーク等の機材の運搬が基本であり、旅客輸送には向いてない。馬体重もサラブレッドと比較したら更に小さい(ミニチュアポニーだと、100kgが関の山…)から、同じ“1馬力”といっても、ペルシュロンと比較したら非力なモンである。