迷馬の隠れ家〜別館:ブルマガバックナンバー〜

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食卓を囲む“産廃”の話w

タイトルだけでびっくりした人、あまりにも軽率ですぞw 食品系の産業廃棄物には、様々なカタチで“再利用”されることに関しては、本家のはでダやTwitterFacebookでも解説した訳だが、競馬だって、それ相応の“産廃”が発生する訳であり、それは巡り巡って、自分達の生活にまで及ぶ事は、意外と知られていない。ま、競馬場内だけの話ならともかく、牧場やトレセンなどでの“産廃”も、実は食卓と直結してる場合があるのだw 今回は、そんな“もったいない”の意味をキチンと理解するための解説。
美浦栗東トレセン周辺の農家にとって、トレセンから出る産廃…使用済み寝藁や馬糞は、貴重な“肥料”である事は、以前にも解説したかと思うが、なんでかといえば、どんな肥料の“原材料”と比べ、馬が出す糞尿は、堆肥作りには欠かせない乳酸菌や枯草菌などの宝庫であり、これを土に混ぜ込み、他の食品系産廃を混ぜ合わせ発酵させれば、有機肥料による農業を行っている農家にとっては最強の元肥になる。つまり、美味しいお米や野菜を作る、基礎の土作りには欠かせない訳であり、これが簡単に手に入る環境となれば、必然的に、多くの農家が馬糞を求めることになる訳であり、また、キノコ栽培を行ってるトコでは、キノコ栽培に適した菌床を提供してもらえるのであれば、これほどコスパに優れたモノはない。同じ理屈は、実は動物園の“産廃”にも言えた話で、特に草食動物の糞尿を適正に処理したモノは、土壌改良剤という名目で、ガーデニング好きの来場者に頒布することがある。
一見すると、関係ないような話ではあるが、農家にとって、食品残渣や家畜の糞尿は、適切に処置することで田畑の土壌改良や農作物の育成に必要な肥料として、さらに畜産業を営むのであれば、肥育に必要な栄養を飼料で賄うために活用されるのであって、そこには一切の無駄は存在しない…むしろ、本当の意味での“エコリサイクル”を行うことが可能であり、化学肥料とて、実際は食品残渣や糞尿を“原材料”にした上で作られている訳である。その一例を挙げると、土壌のカルシウム補充剤として使われる“セルカ”というのがあるが、これの原材料は、生食用や加熱用として加工される、牡蠣の貝殻である。つまり、養殖された牡蠣を、殻を剥いた状態でパック詰すると、必ず牡蠣殻は“産廃”となる。これを肥料業者が回収し、焼いて粉砕すれば“セルカ”になる訳であり、他の成分としてホタテやシジミ等の貝殻も同様に加工され、配合される訳である。これを適正に土壌に撒いてすき込めば、小松菜や春菊などの葉物野菜のカルシウム成分に化けるのであり、その土壌を通過した水は、巡り巡って海に帰り、再び貝類や海藻の養分となる。昨今、“磯枯れ”という現象が日本の沿岸部でも問題になっているが、その根本的原因が、護岸工事等で海岸をコンクリートで整備したことや、下水道の普及によって、過度に浄化された水が河川に放流されていることが挙げられている。もちろん、衛生管理の面で言えば、全国での下水道の普及は急務なのは確かだが、必要以上に養分が海に流れなければ、却って魚介類の生息に適さない海になってしまう…そういうジレンマが、“産廃”の再利用という活路を見出している訳であり、製鉄所から出る鉄鋼スラグ(精錬時に出る不純物)が、コンブ養殖漁者で取り合いになっているのは、そういう事情があるからである。
つまり、農業や林業が盛んで、そこの現場と直結してる河川に流れ込むミネラル分が豊富だと、必然的に魚介類の漁獲量や品質も安定する訳であり、それ故の“食の循環”が健全なトコでは、自然環境が過度に破壊されることはない。言い方を変えれば、バランスを欠いた産廃処理は、却って自然環境を破壊する一因にもなる。もっと言えば、重金属工業や石油化学に偏重した工業生産がメインになったことで水質汚濁や土壌汚染が酷くなった訳であり、大気汚染に至っては、過剰に化石燃料を消費するからダメなのであり、使った分以上の植林や適正な伐採(森林保持に必要な管理)を行えば、これ以上酷くなることはない。本当の意味での“もったいない”とは、手元にあるものを活用せずに他所に求めたり、過剰な利益を求めて生産する事である。もっと言えば、活用の仕方を見出せないのに、オーバースペックなモノを求めるからおかしくなるのであって、自分の生活様式にあったモノで、しかも、自分でできる範囲で止めておく事が、何より他に迷惑をかけずに済むのである。ま、機械で大雑把に田起こしするのも良いが、小さな田畑であるなら、無理に機械化せずに畜力でも充分に耕せるとは思うのだが…w