迷馬の隠れ家〜別館:ブルマガバックナンバー〜

こちらは、2019年まで展開していた“ニコニコブロマガ”の保管庫です。

Shin's Barへようこそ 2015ニコニコ本店 第五夜

シン(以下シ):世間で言うところの“シルバーウィーク”も、今日で最終日ですね…次回のシルバーウィークは11年後との事。競馬も各地で、祝祭日開催を展開してたようですね。昨日も話してましたが、行楽客を相手にできるほどの魅力があれば、もっと競馬場周辺の商店も、活況な状態になるとは思うんですが…
(カランコロン…)
っと…ようこそ、Shin’s Barへ。
チルト(以下筑):飲み直しに来た…お邪魔か?
シ:いえいえ…では、何にしましょう?
筑:ブラントンでミントジュレップ…頼めるか?
シ:かしこまりました…
筑:少々…愚痴を聞いてくれぬか?
シ:本来でしたら、競馬の話をするのがこの店の売りですが、あなたの場合は、競馬はもとより、賭け事に関してはどちらかといえばお嫌いな方ですよね?でも、いいでしょう…相当嫌事を言われ、賊軍呼ばわりされている事が悔しいから、ここに来られたのでしょう。
筑:…ますます、バーテンダーとしての洞察力が身についてるようだな。まぁ…その通りなのだが、どうして、民衆は我々が言っている危惧に耳を貸さないのか?間違った事は、何一つないのに…なぜ気付いてく入れぬ?
シ:俺は、政治に関しては無知というか、関わりたくないというスタンスですが、あえてその答えを示すなら、それこそ、チルトさん自身が、もっと広い視野と深い思想を持つ事が肝心なのでは…と。
筑:だったら、なぜ、今回の集団的自衛権を伴う安保法案が、いずれまた、徴兵制を伴う戦争法になるモノだと…
シ:まず、その考え方が、どこから来るのか、冷静になってみませんか?
筑:どういう事だ?
シ:今回の法案には、そもそも論からして、徴兵制や軍隊としての自衛隊活動の解禁を盛り込んでいる訳ではありません。そして何より、“国防”のための集団的自衛権です。これは、国連憲章にも記載されている部分であり、国内法である日本国憲法よりも、法的効力は上にあるモノです。言い方を変えれば、憲法9条の第2項は、国際法上“違憲”と見做されるのです。
筑:それはつまり、我々の方が勉強不足という事か…ではなぜ、憲法学者やマスメディアは、その事に気づかずに騒いでいたのか?
シ:一言で言えば、迷馬さん曰く“八風に煽られた”という事です。
筑:風に煽られた?
シ:専門的な言葉で言えば、宗教哲学に関わる分野の話なので控えますが、自分の知識が、あるいは経験が全てになっている人は、それゆえに事の肝要はどこにあるのかを見極めず、単に自論のみで騒いでしまいがちだという事です。
筑:だが、他の人以上に私の方が世界を知っているのに、どうしてそれを理解できないのか?
シ:その“慢心”こそが、八風の正体です。自分の方が知識があるとか、自分の方が世界を知っているとか…それはあくまで自己満足の範疇であり、自分の知らない分野、あるいは、他の意見を無視しているうちに、視野が狭くなっている事に気付かず、自分に都合の良い話以外受け入れられない状態になっているからです。
筑:それのどこが悪いのだ?完璧な世界こそが…ん、待てよ?もしそうであるなら、シンが私の話を聞こうとはしないか…
シ:その通りです…対話というものは、双方を尊敬しあってこそ成り立つものであり、一方が地位や権限を振りかざして、相手に自分の意見を強引に押し付ければ、それは、物理的な被害が出なくても“暴力”なのです。そして、自分以外の思考や理念を否定する行為は、他人もまた、自分自身を理解してもらおうと思っても“理解不能”というレッテルで排除する事と同じなのです。“完璧な世界”がどうの言いますが、所詮、それは自分自身の穿った世界観でしかなく、他人から見れば、かなり殺伐とした世界観でしかありません。バーテンダーの一番の素養は、酒の知識はもとより、とにかく相手する顧客の話を聞き、それを不用意に他言しない事です…本来なら、その役目は聖職者の仕事ですが、聖職者であるがゆえに、視野の狭い概念で救済を求める人に教えを説きがちです。視野が狭いと、その概念は固定され過ぎて、それ以外の思考や概念を敵と見做すようになります。しかし、相手を敬うという事は、自分も尊ばれる存在として認めてもらうための所作です。それで勝ち得た肩書きや、過去の功績だけで傲慢な態度になれば、やがてその地位や名誉は、その価値を失うだけでなく、賞賛された方々の地位や名誉も汚す事になります。あ…ちょっと、俺の方が語りすぎましたね。
筑:いや…今ので目が醒めたよ。確かに、今回の件で言えば、与党や政府は話し合いの場を設け、対等に聞く姿勢を見せていたにもかかわらず、野党の一部はそれを拒否した挙句、国会内外で暴挙に出た。これでは確かに、平和的に解決させる術とは言えない…過去の敗戦で臆病になるあまり、そして、危機感だけで本質を見ずに騒ぐばかりでは、いくら抗議デモを行っても、そこに集った者以外、賛同する者が増える事はないか。まして、相手が散々情報を開示して、解説も行っていたにも関わらず、それに耳を傾けもせず、ただ自分の言い分だけ叫んだところで、聴衆からバカにされるのも無理はないか。どんなに立派な肩書きを持っていても、それを利用して相手をバカにしてるのであれば、それは自分をバカにしてるのと同義じゃないか。こんなバカげた事にも気付かず、ただ自分が掲げる正義に酔いしれ、自惚れていたら、幼子にまで後ろ指を指される…実に恥ずかしい事ではないか。やはり、ここに来て良かった…私には、感情任せでなく、事の真意を見抜いて叱ってくれる者が必要だったという事か。
シ:まぁ…人生において誰しも、なんらかの過ちと栄光を繰り返しながら、自分という品格を磨き上げ続けるモノだと、俺は思いますね…という訳で今宵のサービスの一杯。いちごのリキュールとレモン果汁を炭酸水で割った、フレイズ(ストロベリー)リッキーです。チルトさんが飲むにはアルコールが低めですが、程よい酸味と炭酸の心地よい刺激をお楽しみください。
筑:いちごの色で慰めてくれるか…その優しさと、少々皮肉めいた洒落っ気、今宵はありがたくいただこう。