迷馬の隠れ家〜別館:ブルマガバックナンバー〜

こちらは、2019年まで展開していた“ニコニコブロマガ”の保管庫です。

上場馬に“名称”がない理由…

今日から静内(新ひだか町)でサマーセールと銘打ったサラブレッドのセリ市が始まった訳だが、“ニコ生”のコメント欄に“なんで上場馬に名前がないの?”という主旨の意見が飛んでいたが、現在のような表記方法(母馬の名前+生産年)が一般的になったのは、セレクトセール等の情報が、一般にも知れ渡るようになって以降で、少なからずとも20年以上前からである。
それ以前では、いろんな生産牧場で、いわゆる“幼名”をつけてセリ市に出品する事が多かった。これは、市場取引でのルールが現在のように明確な基準がなかった事もあり、また、いわゆる“主取り(取引が成立せずに出場者が引き取る)”でも馬主として出走させるケースが多かった。そういう事もあって“幼名”をつけて上場するケースが多かった訳であり、零細牧場といえど馬主として結果を残し、事業を拡大したり、新しい血統の導入を行っていた。だから、時として生産で失敗しても、その分を取り戻すために、様々な挑戦をやっていったのであり、それを何とかして結果に結び付けようとするために、JRAも育成のために購入し、調教後に新規馬主を対象とした抽選を行って、競走馬デビューの一躍を担っていた訳である。今でもJRAがセリ市で馬を購入するのは、日高や宮崎にある育成牧場で調教した馬を、できるだけ多くの馬主に提供するためであり、また、生産牧場に対して売り上げの一部を還付する意味合いもある。
ちなみに、“みどりのマキバオー”というマンガで主人公(主人馬?)であるミドリマキバオーが“たれ蔵”という名称で厩舎関係者から呼ばれる事が多かったのは、デビュー前が“う◯こたれ蔵”という幼名だった事が影響しているというのは有名だが、幼名のままで競走馬デビューした馬がいるのはご存知だろうか?その最たる…というか、有名なのがアラホウトクである。てのも、生産者でもあるアラキファームが“オーナーズブリーダー”として馬をデビューさせる時は、ほぼ“アラマサ”という冠称を使うのだが、この牝馬だけは最後までいい名称が見つからず、そのままデビューさせたのである…しかしこれが桜花賞馬(1988年)になるのだから、世の中はわからないモノですw ついでに言えば、アラキファームではかつて、幼名に“アラ+甲子園出場校”というのが定番で、アラホウトクの場合、報徳学園(西宮市にある私学、兵庫県下において、東洋大姫路や育英等と並ぶ強豪校)がそのまま馬名の由来になってますw
ただ…最近では、こういった洒落た感じの幼名を付ける生産者が減った事と、血統背景を見て購入する馬主が増えたこともあって、また、セリ市でのカタログに掲載する際、幼名表記だとそういう慣習を知らない海外バイヤー等が勘違い(既に血統用の名称が付帯されている、競走馬名として決まっている等)される事も多いため、馬名表記上は“母馬+年代”という表記が一般的になってます。