迷馬の隠れ家〜別館:ブルマガバックナンバー〜

こちらは、2019年まで展開していた“ニコニコブロマガ”の保管庫です。

臨時投稿:この夏、牧場見学を計画されている方へ…


荒川弘のマンガ“銀の匙〜Silver Spoon〜が好評で、ぜひとも“聖地巡礼”を…と、考えていらっしゃる方も多いかと思う。しかし…競馬ファンで、一度でも牧場見学をやった経験がある人ならわかると思うが、畜産の現場では、通常とは異なる厳重な管理と、それに伴う規制が掛かっている。それは、防疫(家畜伝染病の病原体拡散の防止)と事故防止の観点から、通常は関係者以外の立ち入りを制限せざる得ない話であり、むしろ、日高地方や九州の競走馬を繋養している牧場では、観光資源としての価値から、一般にも見学を許可している事自体、本来はとても貴重な体験であり、まして、繋養馬を触らせてもらえたり、放牧地の中に入れること自体、特別な許可なしではできない事である。(新ひだか町三石青年団主催の婚活ツアーとか、BOKUJOBでの育成馬見学ツアーとか…)そこで、参考までに、競走馬のふるさと案内所のホムペに掲載されている、牧場見学に関するルール(http://uma-furusato.com/guide/)を、簡単にではあるが説明させてもらう。(本家Blogでも解説したが、ここではブロマガ読者向け…という事でw)

まずひとつ目は、畜産業を営む農家にとって、昼間の時間帯は、早朝・深夜の業務で疲れた身体を癒す時間であり、貴重な“シエスタ”である。したがって、事前の連絡なしに、しかも紹介者を介さずに訪問するのは御法度であり、当然、無断で牧場内へ侵入する行為は、犯罪以外の何モノでもない。(おい、そこの“撮り鉄”ども、わかってっか?)故に、競馬ファンであるなら、牧場見学の可否や、見学可能な時間帯を事前に調べておく必要がある。その為に、競走馬のふるさと案内所がある訳であり、ここのホムペでは、見学可能な牧場と、その時間帯を案内しているし、特に新ひだか町静内にある施設では、日高にある牧場の見学状況をリアルタイムで公表している。その為、競馬ファンだけでなく、報道関係者も、牧場での取材の許可を取る為の問合せ先として活用してるトコなので、まずはここへ問い合わせる方が賢明である。もちろん、北海道内だけでなく、東北(主に青森)、関東(主に千葉)、南九州(主に鹿児島・宮崎)にも、競走馬の牧場があるから、それぞれの問合せ先として、各地の案内所はあるんで、必ず、そこで確認を取っておこう。
次に、見学可能な牧場では、係員の指示に従って見学をする事が義務付けられる。特に、厩舎内を見学する際には、靴底の消毒を行わなければならない。これは観光牧場でも同じで、施設内への入退場時には、ゲート付近で消毒剤を染込ませたマットの上を歩かされるのは、先程も書いた通り、防疫の観点からの処置である。万が一、口蹄疫鳥インフルエンザの病原体を付着したままで牧場に入れば、偶蹄目や鶏を繋養している牧場では、家畜の壊滅は免れない…当然、伝貧(感染性貧血症)に罹患した馬が一頭でも見つかれば、生産牧場では繁殖馬を全頭処分せざる得ない為、死活問題に直結する事になる。だから、必ず見学の際は指示に従い、終了後は一言でもいいから挨拶して、退場すること。あくまで、牧場見学は牧場側のご厚意であって、本来は防疫上立ち入りを制限したいトコである。そこを踏まえた上で、見学を行ってもらいたいモノである。
三つ目は、牧場内ではもちろん、その周辺道路でも、騒音は厳禁。北海道内の牧場を巡る時、広大で且つ交通量が少ない直線道路が多い為、ついついアクセルを全開にしたくなるだろうとは思うが、道路沿いにまで放牧地を有する牧場が多い為、いわゆる“頭文字Dごっこ”は御法度w(集落のない区間でも、牧場がある場合があるから…)当然ながら、牧場内で大声を上げたり、不用意にクラクションを鳴らすのは、放牧地での事故を誘発させる事になる。折角、セレクトセールで2億以上の価格を付けた仔馬が、騒音にビビって暴れた挙げ句予後不良…なんてのは、馬主でなくても御免蒙りたい。
もちろん、写真撮影時のフラッシュの使用や、疾走した姿を撮りたいからと、馬に目掛けて物を投げたりする行為も厳禁!!特に、女性は気をつけた方がいいのは、アクセサリーの類は身に着けない事…光を反射する素材を身に着けてると、その反射光に家畜がビビるからである。(ま、一部の有名馬は、フラッシュを焚こうが、周辺で騒ごうが“我、関せず”で平然としていられるヤツもいますが、普通の馬はパニります。)恐怖からパニックに陥った家畜は、予測不可能な行動を取る為、非常に危険だから、写真撮影時や見学時は、必ず守ってもらいたい。これが四つ目。
五つ目、牧場内では飲食はもちろん、タバコの喫煙もダメ。理由は火災予防の観点と、赤ちゃんの誤飲同様に、家畜が吸い殻を飲み込んで中毒事故を起こすからである。牧場に限らず、農家では、引火しやすい肥料(リン含有だと、よく燃えるでw)や稲藁、燃料(トラクターや耕耘機等に使うガソリンや軽油)を保有してる為、うっかりタバコの火がそこに落ちれば…そうでなくても、日高大洋牧場船橋競馬場等で漏電による失火から、繋養馬が焼死したケースが実際にあるので、火の取扱いが厳重なのである。当然だが、周辺道路からの吸い殻のポイ捨ては、牧場でなくても非難される行為であるw
六つ目、上記と被るが飲食物の持ち込み、および勝手に家畜に与える行為は御法度。(ガムもダメw)衛生面と健康の為に、給餌量やタイミングは厳格なまでに管理されている。その為、無断でエサやりをしたり、周辺に食べカスを撒き散らかす行為は、絶対にやってはいけない事…特に北海道では、ヒグマやキタキツネが牧場内に侵入して家畜を襲撃したり、感染症の病原菌をバラ撒く危険を招く事になる。同じ理屈で言えば、ペットの持ち込みも厳禁。(エキノコックスに罹患したいかぁ〜!!防疫上の殺処分は怖くないかぁ〜!!)
そして、最も重要な事は、家畜には絶対に触るな!!これ、一番大事な事で、乗馬施設やふれあい広場を設けている観光牧場以外では、たとえ、家畜の方から近付いて来たとしても、手を出してはいけない…それは威嚇行為であったり、警戒心から攻撃モードになってる可能性があるからだ。係員の許可を得てるならともかく、不用意な接近は、死亡事故を招きかねない。(噛むだけならともかく、あの強靭な後肢で蹴られたら…鋭い角や牙で腹部を突かれたら…
((((;゚Д゚)))ガクガクブルブル)

ともかく、見学可能な牧場は、畜産農家のご厚意で成り立っている事であるのを理解した上でやってもらいたいモノである。
(ちなみに、冒頭の写真は、うらかわ優駿ビレッジAERUで毎朝見られる、繋養馬の大移動。)