迷馬の隠れ家〜別館:ブルマガバックナンバー〜

こちらは、2019年まで展開していた“ニコニコブロマガ”の保管庫です。

臨時投稿:馬券での“脱税”を考える…

 競馬の所得を申告せず、3年で約5億7000万円を脱税したとして、所得税法違反の罪に問われた元会社員の男(39)=大阪市=の判決が23日、大阪地裁であった。西田真基裁判長は、外れ馬券の購入費を経費として認めるという初の司法判断を示した。元会社員の無申告の違法性は認め、懲役2月、執行猶予2年(求刑・懲役1年)の有罪としたが、脱税額を約5000万円に大幅減額した。

 弁護側は「継続的な馬券購入による払戻金は外国為替証拠金取引(FX)で得た利益などと同様の雑所得に当たる。外れ馬券の購入費も経費となり、課税処分は無効」と無罪を訴えていた。(by:毎日新聞 2013年5月23日 10:45配信分より、一部抜粋)
判決内容としては、所得申告をやってなかった事に関しては“罪”として、但し、馬券購入の費用に関しては、一部“経費”として認める…という内容である。しかし、ここで問題なのは、高額配当の投票券を“どこ”で購入したかによっては、それを問えなかったり、場合によっては、終始がマイナスなのに課税される…という事態にもなりかねないという事だ。
つまり、電話投票やインターネット投票(即PAT含む)の場合、購入履歴が銀行口座や通信記録に残る為、いくら誤摩化そうとしても、キッチリ税務官がチェックして徴収される訳だが、これがWINSやAibaなどの場外馬券売り場での購入の場合、どんなに当てても、当事者が申告しなければ、税徴収されない事もある訳である。今回のケースは前者であり、後者であったとしても、申告をやっている場合は、当然の如く所得税を徴収される事になる。
では、なんでこれが問題なのかと言えば…公営ギャンブルは、何の為に開催されているのかという根幹の問題であり、そこんトコを踏まえずに話すと、折角のダービーウィークに“水を差す”事になりかねないからである。以前、本家Blogの方でも解説した話ではあるが、今回は、このブロマガの趣旨に反する行為とわかった上で、改めて解説させてもらう。
現行の刑法において、如何なるギャンブルも本来は、富くじ禁止及び賭博罪として刑事罰の対象であり、胴元が国や自治体であったとしても、開催は法律で禁じられている。しかし、税収が少なく、それを補うのに直接税(所得税・住民税等の類)、および間接税(消費税・揮発油税等の類)の大幅な引き上げに対して、国民(納税者)からの反発を招きかねない事から、それを軽減する目的で、様々な公営ギャンブルが存在する訳である。つまり、宝くじやtotoも、三競オートと同様に、税収不足の補填として、高額配当を謳い文句に、利用者を募ってるのである。その為、これらの開催に伴うカタチで“アンチ法”が存在し、こと、競馬に関しては中央・地方に関係無く“競馬法”という法律をもって、刑法で定める“富くじ・賭博の禁止”に抵触しない事を保障した上で開催してる訳である。言い方を変えれば、今すぐに消費税を30%以上に引き上げても良いのであれば、公営ギャンブル全般を廃止するのは簡単な話だが、それによる物価上昇と、低所得者の困窮は、避けられなくなる事を意味する。つまり、生活保護を申請してもその分以上の税金を取られれば、まさに“本末転倒”な話になる。
では何故、今回の判決になるのか…その理屈を考えれば、凄く簡単な話で、税務署…というより国税庁としては、多額の収入を得てるクセに納税しないのは何事だという事で訴えてるが、被告側にしたら、とんでもない言いがかりであり、それに似合うだけの“納税”はやってるというのが“言い分”なのである。故に裁判所も、確定申告時の虚偽は認めても、その“基準”に関しては、馬券購入金額に対しての“収益”で求めるべきとした訳である。ま、ある意味“大岡裁き”に近いというか、“喧嘩両成敗”なトコがあるといえばそこまでではあるが…
ただ、ここで問題なのは、最近発売になった“ロト7”の高額配当に関しては“非課税”なのに、公営ギャンブルでは、何故確定申告による収支報告が必要なのか?これに関するカラクリをいえば、一番問題になっている“控除率”というヤツにヒントがある。一般的な公営ギャンブルでは、一部の賭式を除き、一律25%の控除率が設けられている。これは、開催に必要な経費と、主催者…つまり胴元である国や自治体の税収分としてカウントされている部分で、中央競馬の場合、更にその8割は、国庫の歳入に組み込まれている。つまり具体的に言えば、100円の馬券のうち、25円分がJRAで徴収され、そのうちの8割…つまり、20円は国庫へ入る事になっている。実はこれも、競馬法による規定で、それを“開催条件”としている訳である。従って、馬券を購入する事は、勝負の結果以前より、国庫に“直接”お金を入れる事を意味する。逆を言えば、いわゆる当たり馬券の“払戻金額”は、残りの75%…つまり、75円分の収益をファンに還元してる訳であって、それが、オッズによる人気指数で変動する訳である。だから、大穴狙いで当てても、鉄板の本命で的中しても、その払戻金は、既にそれだけ分の“手数料”が引かれた状態で表示されている…って事である。
しかし、高額配当が見込めるロト7も含めた宝くじの場合、この控除率がある意味“ぼったくり”に近いモノでして、通常の宝くじでも50%、ロト6や7だと、70%以上もの控除率が掛けられている。つまり、喜々としてドリームジャンボ宝くじを購入しても、一枚300円中150円は、その殆どが各自治体の収益として計上される仕組みである。その代わり、この高い控除率を考慮し、宝くじでの配当(当選金)は、臨時所得として確定申告を行っても徴収されない…つまり、非課税扱いになっている。ここに、他の公営ギャンブルとの“格差”がある。そう、一方では配当金額に応じて税金を払うべきだとされ、もう一方では、どんなに当てても“非課税”という理不尽さが出る訳である。どちらも、同じ公営ギャンブルであるにも拘らず、この扱いの差である。
ま、国税庁ももう少し冷静になるべきであり、単に馬券で大儲けしてるからという理由“だけ”で、過剰な追徴課税を見積もるのはどうかと思うし、また、競馬のみならず、公営ギャンブルのファンであるなら、資産運用目的でのギャンブルからは、足を洗った方が良いのかもしれない。