迷馬の隠れ家〜別館:ブルマガバックナンバー〜

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AMラジオ廃止で騒ぐ前に…

ぶっちゃけ、競馬そのものとはあんま関係ない話なんだが、先日、民放連が総務省に、AMラジオ廃止を提案したというニュースが流れて、一部のラジオファンが大騒ぎしてた様なんだが、誤解や偏見がある様なんで、この場を借りて、競馬場内でのラジオ番組サイマルFM放送をやっているかって話を交えながらやっていこうと思う。案外知られてない話だが、オイラが競馬を始めた頃(30年近く前)には、それこそ場内のみで聞けるFM放送局が東西主場(中山・東京・京都・阪神)にあって、開催時はガチな話、音楽好きの競馬ファンからリクエストを受け付けて、レース前とかに流してた訳である。ま、オイラと同世代で競馬場によく行ってたなら、“TSS”って略称を知ってる人も多いかと…w

それはさておき、地域限定のラジオ局を作るのに、なんでFMが多いのかと言えば、実は、AMラジオに比べると、大掛かりな放送設備を要さないのが特徴で、トランスミッターとマイクがあれば、ぶっちゃけ何処でも“開局”できるからである。もっと言えば、非営利で、且つ、敷地内や建物の一部といった格好での小規模出力(確か1100W未満)であれば、総務省から発行する無線取扱免許(この場合は。いわゆる、営利目的の放送免許)の取得は不要であり、流す放送内容も、事情が事情(通常のAMラジオでは受信障害が出る等)ならば、サイマル放送も認められてる訳である。つまり、昨今のワイドFM化の流れと一緒で、目的としてはスタンド内や敷地内でのラジオ受信困難エリアの解消を目指してやってる訳で、、違いがあるなら、あくまで競馬場およびウインズ館内限定で、実際のラジオ放送をFMトランスミッター経由でのサイマル放送をやっている訳である。

で、なんで場内FMをやってたかと言えば、これに関しては、まさに今のJRAのキャンペーンである“HOT HOLIDAYS”よろしくな話で、元々は若年層の競馬ファンに、もっと競馬を気軽な感じで楽しんでもらおうといいう主旨があって、それゆえにノリとしては、既存のFMラジオ局よろしくな状態で放送してたって訳である…が、当時はそもそも、若年層のファンの方がレアでコアな分類であって、スタジオでガチャガチャやってても、集うのは大概、昼休みに専門紙の記者が登場してメインレースの予想を公表するのを待ってる、ヘヴィな鉄火場オヤジばっかだった…TSS(ターフサウンドステーション)と名称変更しても同じで、結局、グリーンチャンネル開局以降、数年して廃止となった訳である。ただ…今でもFMサイマル放送が続いてるのは、スマホ経由でradikoを利用する人よりも、ポケットラジオで競馬中継を聴く人の方が多いからであり、その方がパケ死にせずに済むからだw

冗談はさておき、AMラジオやラジニケの短波放送ってのは、実は受信機は単純構造でも、送信技術に関しては、素人にはとても手が出ないほど大掛かりなモノで、FMラジオ…マニアックな言い方をすると“超短波帯放送”と比べて、送信時に電力のバカ喰いをするという欠点がある。ラジオのプロとも言える人でも勘違いしてる人が多いが、AM(中波)ラジオは、首都圏広域放送で出力100kWで、昼間はどうにか関東地方ほぼ全域で聞けるんだが、これが夜だと、手動で周波数を合わせられる、昔ながらのラジオ受信機だと、ほぼ日本中をカバーできるとされている。(但し、大概は北朝鮮かロシアの電波に邪魔されるけどw)短波放送の場合は50kWで、昼夜問わずに日本中をサービスエリア圏内としてる訳だが、海外の短波放送との混信を避けるために、3つの電波帯で放送してた訳だが、去年から原則として6Mhz帯のみでの放送に切り替えたのは、表向きの話として、3Mhz帯と9Mhz帯での放送は海外短波局との混信が激しいということになってるが、太陽の黒点運動の影響も受けやすい上に、3つの電波帯で放送を維持すること自体が、経営コスト的に重荷になってるトコがあっての話でもある。しかも、送信所の位置や地球の自転運動の影響で、電波の多くは西に飛ぶ習性があって、それが因で海外で受信障害を起こしかねないトコがある。CRKラジオ関西の送信アンテナが指向性を持っているのもそういう事情で、フィリッピンでのAMラジオの受信障害(実は同じ周波数のラジオ局がある)の関係で、送信用とプラスして、西に電波が飛ばない様に阻害する(強制的に電波を東側へ増幅させる)アンテナがある。この送信アンテナ…通常は巨大なポール型アンテナ(三点ワイヤー支持式が主流)を設置するには、平坦で広大な敷地を必要とするため、放送局が支払う固定資産税がバカにならないのである。(CRKのは、自立タワー式で別バナだが…)翻ってFMラジオの場合、電波の出力が広域放送でもせいぜい10kWで、大概は山間部でも谷間を縫う様に通り抜ける性質があって、小型のアンテナでも充分に電波を飛ばせる上に、現状では余程でない限りは放送局同士での混信も少ない…とあって、更にテレビが地デジ化によってVHFローバンドが空白になったことを受け、“ワイドFM”として運用しとけば、今までテレビの送信所として使ってた施設が、丸々再利用できるって訳である。

つまり、今後日本の既存AMラジオ局が生き残るためには、本家でも指摘した通り、radiko経由でのWebラジオに移行するか、ワイドFMへの移管は時間の問題であって、諸外国…特に欧州では既に、AMラジオそのものは絶滅危惧に近い。(いや、根絶してたかも…)当然だが、JRAの施設でもフリーWiFiの整備が整い、スマデバ経由でradikoでラジニケを聴く人が増えれば、FMサイマルが廃止になるのも時間の問題であり、それは一つの“ラジオの歴史”の転換期になる話である。



とは言え、現段階ではあくまで、総務相に対して“意見”を民放連が挙げただけであり、また、radikoの利用者が爆発的に増えてる訳でもないんで、当面、AMラジオが廃止に伴っての停波することは無い。だが、これは時代の流れであり、緊急時のおいてアナログ的なAMラジオの優位性は、現状では失われてはいない…しかし、去年の台風被害や24年前の阪神淡路大震災の様な状況になれば、旧態依然な設備のままでは、確実に放送ができなくなる可能性がある。その復旧にかかる費用を踏まえれば、必然的に究極の選択を迫られているのは、リスナー以上に放送局自身であることを理解してほしい。