迷馬の隠れ家〜別館:ブルマガバックナンバー〜

こちらは、2019年まで展開していた“ニコニコブロマガ”の保管庫です。

あんなトコでも70年も競馬やってるんですよ…な話。

先週の補足ですw 今回は中野アナが話題に挙げたことに対して、競馬場としては“異例”な立地条件であることを解説していないと思い、そこんトコを踏まえた上での話を展開しようという訳である。

そもそも、なんで“阪神”競馬場かと言えば、もともとは現在の鳴尾浜周辺(てか、武庫川女子大の敷地)にあった鳴尾競馬場の“代替地”であり、本来であれば、今よりももっと北の逆瀬川付近に移設する予定が、諸般の事情で頓挫したのをきっかけに、現在の西宮市と宝塚市の境目付近になるあの場所にできた訳です。つまり、元は阪神電車沿線の競馬場だったのが、戦時下以降のドタバタを期に阪急沿線に引っ越した訳であり、その際に競馬場として開発するにあたって、当初の予定地への移設が困難となった事を受けて、仮設置がそのまま永続的な存在になった訳です。

で、なんでスタンドが北向きかというと、これは地形的なモノの関係でこうなった訳で、24年前の阪神大震災で、コレが幸いすることになるとは、誰も予想できなかった部分と言える訳です…てのも、実は駅名にもなっている競馬場のすぐ近くを流れてる武庫川水系の一つである仁川がクセモノで、ある意味、ここを境に西宮側がエラい事になった訳で、仮に南向きにコースやスタンドが造られていたら、復旧までにもっと時間を要してた可能性があった訳です…てのも、この仁川、普段は地表には殆ど水の流れを見せない川でして、地下水脈化してる状態なモンだから、周囲の地盤は意外と緩い。特に西宮側は震災時、多くの箇所で液状化による地滑りや陥没が発生し、それプラスで高度成長期に急ピッチで建造した建物が崩壊したため、神戸ほどでなくても甚大な被害が出て、復旧までに時間を要した訳である。現在のスタンドは震災前に建て替えた際に耐震性を高めたモノにしてたため、内装に被害はあっても、大したことはなかったんだが、現在の芝内側コースの3〜4コーナー付近に、地下水脈の影響を受け、仁川寄りに引っ張られる格好で亀裂が入った…さっきも言ったが、もしも南向きであったら、バックストレッチにあたる部分が崩落してた可能性もあったというのは、この震災によって判明した事であり、むしろ、先人達の先見の明に恐れ入った次第であるとも言える。


さっきも記載したが、もともと鳴尾浜にあった競馬場が現在地に引っ越すきっかけは戦後処理が関わる話であり、現在の沖縄の問題や、横浜根岸競馬記念公園の一部が今でも在日米軍所有地である事につながってる話である…ってのも、終戦後に鳴尾浜一帯も接収されたためであり、移転先候補地だった逆瀬川付近には、戦時下に廃止になったゴルフ場があってコレがのちに阪神競馬場の内馬場にショートコースのゴルフ場が設置される事になる訳で、故に、競馬非開催時は会員制のゴルフ場として運営してた歴史がある。今でこそターフビジョン更新工事の前にゴルフ場の運営そのものが廃止になったのと、中山や府中に比べて狭い事から馬場内でボール遊び等をしたら開催に支障が出るということもあって、通常では入れなくなったものの、今でもその名残はいたるところに存在する。ま、ゴルフ場として運営してた時の笑い話に、馬場内から飛び出して障害やダートコースにボールが落ちた時点で“ロストボール”扱いになるというローカルルールがあって、競馬開催前の馬場整備をやってると、タマに芝コースでゴルフボールが見つかる事があったというw(ま、特殊なショートコースでしたから…)

他の競馬場にない特徴といえば、実は交通の便が“非常に悪い”ってのも挙げられる…一見すると仁川駅直結の地下通路があって便利そうに見えるが、逆を言えば、それが一番のネックとも言える訳で、正直、公共交通機関による移動は、阪急今津線一択しかなく、また、周辺道路も地図上じゃ抜け道や迂回路がありそうに思えても、実質的には県道337号線(中津浜線)以外は競馬場に繋がっていない…故に、マイカーで行くにも渋滞必至だし、阪急以外の公共交通機関は存在しないという劣悪な環境である。特に桜花賞宝塚記念開催時は、完全に交通事情がパンクするのはお約束であり、仁川駅周辺を避けてクルマを停めても、これからセンバツで賑わう甲子園付近も同様の状況になるため、西宮市内の駐車場…特に阪神と阪急が交差する今津駅やその周辺の駅前駐車場がパンク寸前になるのは毎度の話である。(特に大阪杯センバツの好カードが重なると、どっちでも地獄見んぞ…いや冗談抜きでw)

ま、散々disってみたものの、それでもここが西日本の主場の一つとして機能してる最大の理由は、メインターゲットとなる阪神間競馬ファンにとって、手軽に行ける中央競馬の馬場であることが大きい訳であり、また、大阪杯桜花賞の時は、関西…というより兵庫県下における“桜の名所”としても知られる場でもあるからこそである。ちなみに、園田競馬場もそうなんだが、実は競馬場内の売店の一部は阪急系列の子会社が売店経営を担ってることもあり、開催時に阪急ホテルグループのレストランが出張販売を行うのは、そういった経緯が背景にあるのと、阪急沿線の施設だからこその“運営方針”ってヤツである。言ってみれば、“小林一三イズム”は、ここでも健在なのである…w