迷馬の隠れ家〜別館:ブルマガバックナンバー〜

こちらは、2019年まで展開していた“ニコニコブロマガ”の保管庫です。

人も馬も、重要なのは…

今年も凱旋門賞は、日本産馬とは“縁がなかった”という結末になった訳だが、だからと言って、明後日な方向の意見がSNSで飛び交っている事について苦言を呈すと、毎年、オルフェーヴルクラスの実力馬がいる訳でもなければ、かつ、欧州の芝に適性がある日本産馬とは、早熟だろうが晩成だろうが関係なく“結果”を残している。まして、競馬コミックの世界の様に、JRAおよび地方競馬在籍のまま長期間海外での遠征を行うことは、現実問題としてコストに見合う結果が出ないと持続は不可能であり、いくら海外の競走馬が航空便での長距離輸送に慣れてると言っても、馬場状態や気候の変動に左右されやすい条件は日本馬以上のハンデを持った上で、日本や香港、オーストラリアなどに遠征する欧州産調教馬もいる。そういった意味で言えば、血統や調教・育成過程に関して、日本は劣悪だとは思わない方がいい。

では、海外の大舞台での勝負事において、今の日本の競馬界には何が“足りない”のか?たった一言でいえば、根本的な人材育成の不足…つまり、機材や施設は充実してても、それをフルに使いこなせる人材そのものが、圧倒的に不足してるのです。馬もまた然りで、血統的には優れたラインがいくつもあるのに、どうしても人気サイヤーラインに集中し、また海外からアウトブリード繁殖馬(牡牝共)を輸入しても、早急に結果を求めすぎるあまりに、結果が芳しくないと判断すると、そこで“ポイ捨て”となる。これでは、いつまで経ってもいい人材も、理想的な競走馬も、育成できたモノじゃない。

ただ…“育成”とは将来を見越した“投資”であり、故に経済的な面でのコストが膨大になりやすい。それ故に90年代後半から、いわゆる“就職氷河期”と言われる時代が、およそ20年以上続いた訳で、その間に育成に欠かせない中間層…つまり、オイラとほぼ同世代の人々が、“コスト削減”という名の下で雇い止めを喰らった挙句、どうにか就職できた者すら、ただでさえ少ない人出でやりくりする様な状況の上、労基法に抵触するほど…否、完全に労基法を無視した勤務で無理したが故に、心身共にボロボロな上に、まともに後輩を指導出来るスキルがないまま現在に至る、いわゆる“派遣社員”というバイトやパート職が大半である。それで新卒を大量に雇ったとしても、必要なスキルを教えられる技術者自信を“金喰い虫”と言ってリストラしたら、技術の継承もできない上に、才能を活かせずに持て余す事になる。

つまり、世界を相手に本気で戦い続けるには、いかに人材育成に投資できるかであり、それを今まで怠ったツケが、技術低下を招いてるだけの話である。ノースヒルズや社台グループが躍起になって、あるいは岡田総帥率いるラフィアンが様々なアプローチで、他の大手馬主でもそうだが、とにかく自分が持ってる資産を抛ってまでも、世界の競馬に挑戦するのは、単に日本産馬の知名度を上げることではなく、日本の競馬従事者自身の技術革新と向上…即ち、国際社会において恥じないホースマンの育成に尽力してるのであり、そのために農水省や外務省に対して、喧嘩を吹っ掛けて法整備を急がせてるのです。だけど、それを阻んでるのは、競馬を単純にギャンブルとして見下し、馬主の資産を他の事業に回せと訴え、馬産地の経済を破壊しておきながら被害者ヅラをする、一部の市民団体です。資産家が気持ちよく散財する条件とは、その散財によって経済活性が促され、その“利益”が手元に来るための仕組みがあることが絶対条件です。その“経済活動”を批判した上で、“資産を根こそぎ寄越せ”と言ってる輩に、誰が気持ちよく恵みます?そこが理解できない以上、話になりません。

つまり、同じ馬主でも、世界や社会全般に目を向け、今後を見据えて行動する人と、単に目先の結果や収益だけに捉われ、数値だけで価値観を測る様な人では、完全に答えは違ってきます。むしろ、人材育成に惜しまぬ資金投入ができる人程、そして、時間が掛かる事を解った上で尽力する人ほど、競馬以外の部分でも、会社経営や組織運営において大成してる訳なのです…言い換えれば、真のカリスマとは、人材育成に長けた指導者であり、様々なジャンルの人からも信頼される程の人格者なのです。