迷馬の隠れ家〜別館:ブルマガバックナンバー〜

こちらは、2019年まで展開していた“ニコニコブロマガ”の保管庫です。

競馬関連同人作品に関する話…

ウマ娘”の公式サイトで、こんな注意書きが表示された件について、ちょっとこの界隈…とくに競走馬の名称と肖像権みたいな事について、なんで一部の実在馬(主に社台系)の“二次使用”が制限かかってるのかを、ファングッズの歴史とともに解説しようと思う。一般的なファングッズで、JRAや関係各所の“公式グッズ”扱いになってる分に関しては、どんなに古くてもオイラが記憶してる範疇では、フジテレビが宮本輝の小説“優駿”を開局記念の映画として映像化した際に作った、オラシオンのぬいぐるみが“元祖”と言って過言ではないと思う。しかし…競馬ファンが認知してる競走馬ぬいぐるみの元祖は、やはりオグリキャップ(88年有馬記念バージョン)であり、これ以降、競馬場内にファングッズショップが開設される様になる訳であり、特に四大競馬場(中山・東京・京都・阪神)に専門のショップが併設される様になったのは、90年以降の話である。それまでは、ファングッズというモノ自体が少なく、基本、売店で取り扱うモノと言えば、競馬新聞と筆記用具(主に水性サインペン)ぐらいしかなかった。

ファングッズも、基本は競馬場での実用性が主眼にあるため、取り扱いが始まった当初は、テレホンカードやJRAのロゴが入ったサインペンとかが主流で、オマケ程度にキーホルダーや手帳などがあった程度だった…これが一変するのが90年代の話であり、その牽引役こそ、オグリキャップ武豊騎手なのである。先述したオグリキャップのぬいぐるみは、当時の馬主が自分で経営する会社で製造する文具やキャラクターグッズの新規開拓を行う上で、ちょうどGⅠ戦線でも活躍する様になったことを受けて、競馬に関心のない女性にもウケるのではと思いつき、玩具小売店でも販売できる様、デフォルメしたのが始まりとなる。この“先見の明”が、90年代の第二次競馬ブームで的中し、一時期、キディランドや東急ハンズなどのファンシーグッズを取り扱う小売店で、専用コーナーを設けるほど盛況だったのはいうまでもない。ただ…この競走馬ぬいぐるみに関しては、実はそのブームに水を差す様な事案が2回ほどあって、そのうちの一つが社台グループの所有馬である、サッカーボーイぬいぐるみの発売においてのドッタンバッタンであり、これのせいで、一時期、競走馬のぬいぐるみが“製造中止”に追い込まれたことがある。詳しい事に関して、ここでの明言は避けるが、販売経路を一般の玩具小売店から競馬場限定に切り替えた事で、販売が再開され、現在は別メーカーからの発売になったものの、競走馬のぬいぐるみが、競馬ファンの“ファングッズ”として定着したのはいうまでもない。(オイラの自宅には、およそ400体の競走馬ぬいぐるみが存在するが、その多くは、90年代に発売されたモノで、当時は新作が半年ペースで15〜20体なんてザラだったw)

競走馬ぬいぐるみに関してもう一つ、この事がむしろ今回の規制にかかってる部分とも言える話をしとくと、この当時の競走馬ぬいぐるみで、どんなにGⅠで活躍しても、決して商品化されなかったモノがある…それは、メジロ冠称馬関連である。というのは、当時のオーナーである北野ミヤ女史の概念に、“自分の持ち馬が虐められる姿を見るのが耐えられない”というのがあったためとされている。そのため、アパレル関連(Tシャツやトレーナー等)のファングッズはあっても、ぬいぐるみの発売は、一切なかったのである。(メジロマックイーンだけは、のちにノーザンホースパーク限定で現在の“アイドルホース”シリーズ版で発売されたことがあったが…)つまり、馬主の中には、持ち馬が“実名”で登場する同人作品に関して、あまり快くない人が存在していて、社台系の競走馬が“ウマ娘”では、露骨なカタチで登場しなかった背景にも、ここんトコが起因となっている訳である。また、一部の競馬ファンSNS上でも指摘してる様に、馬主同士でも人間関係がややこしいトコがあって、ファンとしては“最高の組合せ”だと思ってても、実際問題としてトラブルを引き起こしかねない事案だったりする訳である。今回の“ウマ娘”アニメで、多くのメジャーな馬主が実馬の“アニメキャラとして”の使用に関して快諾した背景にも、アニヲタ界隈に関する理解があったからこそであり、特にタニノ(ウオッカ)とスズカの馬主が、こういう事に寛大だったことと、その“橋渡し役”として武豊騎手の存在があったからこそと言って良い訳である。事実、チームスピカの在籍ウマ娘を実馬に変換してよく見ると、ゴールドシップトウカイテイオーダイワスカーレット以外は、実は一度でも武豊騎手が乗った馬であり、当然ながら(ある意味モブでチョコチョコ出てた)オグリキャップも2回(90年安田記念有馬記念)テン乗りしている。

武豊騎手に限らず、騎手のファングッズに関してもちょっとやっておくと、90年初頭当時は、現在は調教師となった松永幹夫角田晃一といった、当時の若手騎手東西10人でユニットを組んで、広報活動をやってたことがあって、この中には横山典弘騎手や蛯名正義騎手も入ってた…もうお解りいただけたであろう、現在でも現役で、しかも競馬の啓蒙に今でも深く関わってるのは、この当時からの話であり、テレカでも、ブロマイド代わりに購入する女性ファンが多く、公衆電話で使うよりも、コレクションとして収集してコンプリートを目指した人もいたほどである。(のちに、エポック社から騎手のトレーディングカードが出たんだけどねw)しかし…ここでもちょっとした問題があって、写真週刊誌が是が非でも発売部数を伸ばそうとして、様々なジャンルの若手を被写体にしたヌード写真を掲載することが大流行し、これに幹夫調教師(当時は騎手)が引っかかり、師匠の山本調教師共々出版の差し止めと当該写真の全買取を行うといった騒動があった。この一件があって以降、JRAとして対策を施したのが、無料配布されている“ジョッキー名鑑”の類なのである。今でこそ、個々の騎手に対する画像がWeb上で公開される機会が多いが、昔はこういうこともあって、騎手や競走馬の写真集そのものが販売されること自体稀であった。故に、当時の“お宝写真”の一部には、人権侵害な“不適切画像”ってのもあり、この“火消し”のために、主催者の許諾無しでの一般誌(ゴシップ系写真週刊誌)の取材は“原則禁止”となった訳である。もちろん、放送局での番組制作に関しても同じで、バラエティー番組への出演に対して、競馬とあまり関係ないモノや、ドキュメンタリーでも事実と異なることを“番組の演出”として放映することを禁じたのである。再現ドラマに関しても、事実に基づかない部分は、当然ながらカットされる訳である。

以上の経緯があって、一部の馬主や牧場関係者、厩舎関係者から“ウマ娘”関連の二次作品に関して疑念と不信感がある訳であり、ファングッズの一部に、事情があって商品化できなかったモノがいくつか存在する訳である。ま…競馬実況アナに関するファングッズで、90年代に杉本アナのグッズがあったのにダダ滑りしたのは、あんまりにも露骨過ぎたトコがあったという訳であり、逆に今、ラジニケの“踏み切ってジャンプ”Tシャツが流行ってる背景には、実況アナの“台詞”のみをグッズ化したからこそと言って良いかもしれないw