迷馬の隠れ家〜別館:ブルマガバックナンバー〜

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競馬実況アナの“本文”とは…

今回の話は、3年前に本家Blogの方で書いたネタ(http://blogs.dion.ne.jp/strayhorse/archives/9215523.html)なんだが、競馬実況アナ…特に中央競馬の場合、中継スタイルや役割によって、各放送局独自の伝統がある。しかし、実際問題として、競馬実況アナの殆どは、他のスポーツ実況との兼任であり、ラジオNIKKEIみたいに“競馬専門”というスタイルをやってるトコは、非常に稀である。(ちなみにMBSの場合、かつてJRAの西日本側で午後の場内実況を引き受けていた歴史があって、その名残があるんだが…)
今はレース実況の新しい方向性を探ってる時期なのかもしれません。あと何年かすると我々の実況もすっかりテレビの実況になっているかもしれませんし、あるいはラジオの描写が盛り返してるかも。私個人的にはできれば自分の会社(ラジオNIKKEI)だけでなく、他局のアナウンサーにもキメの細かい描写の実況をずっと続けて欲しいと思っています。それがファンの皆さんに感動を与える実況だと信じていますから……。
(週刊競馬ブック2010年2月22日発売分“こちらラジオNIKKEI放送席”より抜粋)
これは、藤田直樹アナが書いたコラムの末尾にあった文章だが、本人が言わんとしてる事は、競馬実況において、どういう実況が“正解”なのかは、時代背景によって変化するし、自分自身で最高のパフォーマンスだったと思っても、ファンがそれを理解してくれるかはわからないという意味合いがある。また、全文に渡って滲み出ているのは、今は亡き広瀬伸一アナの実況に取り組む姿勢こそ、飽くなき探究心で競馬に携わる者としての態度ではないかという事である。(ま、広瀬アナや藤田アナの事ついては後日、もうちょっと詳しくやるんで、ここでは省略w)
さっきも書いたが、競馬実況と一口に言っても、ラジオNIKKEIと他局では事情が完全に違う。まして、フジテレビとKTVでは、実況スタイルはともかく、同じ系列局でありながら、放送の歴史そのものが完全に違う。(当たり前だが…)当然ながら、競馬場がある放送局で、中継をやるにしても、夏場の本開催(北海道開催含む)ならともかく、裏開催(第三場扱い)で、折角の機会に東京(あるいは大阪)の放送局が現場に乗り込んで、いかにも地元みたいなドヤ顔で実況してる姿は、正直、地元の放送局も気が悪い。とはいえ、福島や新潟の場合、やりたくても人員が…ってトコもあって、泣く泣く東京から“ヘルプ”を要請する…と言った部分も無きにしも非ずなんだが。
ともかく、競馬中継をやっている放送局にとって、実況アナの育成には、殆どの場合、専任で任せられる先輩がいない…という事もあり、必然的に他のスポーツ実況との兼ね合いを含めてやっている…っといったトコだろう。ただ…MBSの場合、競馬とボートレース(競艇)に関しては、昔、公式放送として採用されてた経緯があり、それ故に、スポーツ担当でありながら“ギャンブル専科”のアナウンサーが必ずと言っていい程一人は存在するという状況がある。その先駆けが蜂谷薫アナであり、その“伝統”は、来栖正之アナが引き継いでいる。(ここら辺の経緯は、蜂谷アナ、もしくは来栖アナの紹介で取扱うんで、ここでは省略w)
競馬実況は、他のスポーツと違って、常に金銭が絡む。(ギャンブルですから…)また、通常の中継と違って、レース展開を如何に視聴者・ファンに正確に伝えるかという、シビアな部分が多く、また、限られた時間での描写力がとわれる、非常に特殊な部類である。故に、淡々としたマラソン中継の様な忍耐力も、相撲の様な間合いの取り方や瞬間的な洞察力も、レース実況において非常に重要なファクターとなる。つまり、細かな描写とレースそのもののテンポ・リズムを如何に自分の言葉で、そしてできるだけファンに解りやすく伝えるかは、まさに実況アナの数だけ千差万別なのである。また、地方によっては、方言が混じった方が聞き取りやすかったり、変に標準語に拘り過ぎて、実況中に舌を噛んでる様な危なっかしい実況をやってる人もいる訳だが、それも全て“ファンのため”故の苦労である。まして、裸眼視力が良いアナウンサーはともかく、眼鏡やコンタクトレンズ着用が必須な近視、あるいは乱視等の視力ハンデは、声の次に“致命傷”になる場合もある。事実、白川次郎アナは30代の頃、目を酷使した事もあり、近視が進み過ぎて年に2回も眼鏡レンズの交換をやったり、50代にはそれが祟って眼球の変形に伴う網膜剥離を患っている。もちろん、近視・乱視だからと言って競馬実況ができないという訳ではない。むしろ、元々裸眼視力に自信がある人でも、経年劣化で近視になる人が多い為、一概には言えない。事実、北野守アナでも、ラジオたんぱ(現:ラジオNIKKEI)入社時には1.2だった視力が、退社間際には裸眼で自動車運転免許を取得するのにギリギリなトコ(片目で0.3以上、両目だと0.7以上無いと眼鏡・コンタクト着用が条件になる)まで視力が下がった…という。つまり、それだけ目にとっては過酷な環境下で実況してると言える。(ま、吉田勝彦アナの場合は、実際に右目が見えてない状況で30年以上実況されてるから、如何に視力がヤバヤバでも、ある程度の技量があれば、話は別ともいえるんだが…w)

しかし、競馬実況の“本文”とは、レースの魅力を如何にして言葉で伝えるかが勝負であり、それ故の創意工夫がそれぞれの“持ち味”として“〇〇節”とか“▲▲節”といった表現でファンから愛されるのである。それは、どんなスポーツ実況アナでも言えた事であり、“甲子園の父”と称される植草貞夫アナにしろ、“花園の父”と言われた井上光央(てるひさ)アナにしろ、そこんトコは共通した部分である。が、唯一違うのは、競馬場は開催日程によって場所が変わるから、先述の二人と違って“位置固定”という概念が存在しない。逆に、中央競馬の実況において固定されるのはレース名であったり名馬の名前であったりする訳であり、“テンポイント杉本清アナ”という“図式”は、そういったモノの例えであり、もっと特殊な言い回しとして“ミスター桜花賞”とか、“ダービー実況の申し子”といったケースが存在する。(オイラがタマに使う“菫華の君”っていう言い回しも、その概念からくるモノ…誰の事なのかは、該当するアナを紹介するまで…秘密w)