迷馬の隠れ家〜別館:ブルマガバックナンバー〜

こちらは、2019年まで展開していた“ニコニコブロマガ”の保管庫です。

見えない状況下での実況…

2週前の函館競馬場で、完全にモヤで視界不良という実況アナ泣かせな状況が発生した訳だが、その瞬間、誰しもが考えたのが、1996年のバイオレットSでの“伝説の実況”であろう…ま、このブロマガでも取り上げたことがあるんで、ここでの動画紹介は割愛するが、それをやろうとしてできなかったことを、当時実況担当した“中の人”がSNSとかで発信してる訳だが、あのバイオレットSの“舞台裏”を知っていると、これは“運が悪い”としか言いようがない。てのも、あの実況、いろんな要素が重なり合ってできたモノであり、第三場で、しかも通い慣れていない現場で、さらにフォロー役が若手だと、あれを真似ようと思っても、それは無理ってモノw では、なんであのレースが“伝説の実況”と成り得たか?オイラの推測ではあるが、ちょっと解説していこうかと思う。

まず、“時計だけで実況”ってのは、経験値からできる代物であり、コレに関して言えば、MBSのアナウンサー連中の“お家芸”とも言える、架空実況の“基本”である。わかりやすく言えば、“現場”で実際のレースを見ながらやる訳じゃないんで、必要なデータは、レースの“距離”と“平均走破タイム”であり、コレに、実際のレース出走馬の頭数を揃えておけば、あとは想像力でレースを勝手に作って“実況”をやればいい訳である。その最たるネタとして、今から27年前に、蜂谷アナが某ラジオ番組のリスナー招待イベントで披露した“勝手に有馬記念w”である。始める前にリスナーに対して、「手元の時計、2分30秒ほど僕にください」と指示してから、適当に当時の現役馬数頭ピックアップし、おもむろに実況を始めた訳である。(のちにコレが、“オグリのラストラン”を予言する実況となるのは、誰も知る由も無い話な訳で…w)つまり、“時計だけで実況”をやるには、その“下準備”として、レース距離とその平均時計が必須であり、そこを把握してないと、実際のレースでやれと言われても、できるモノではない。

次に、フォロー役が如何に“現場”での経験が豊富かというのがカギになる。というのも、実際の実況を聞いたらお分かりかと思うが、広瀬アナが実況する際、スタート地点が全然見えない状況で戸惑ってると、ゲートが開いたことを、掲示板の時計で気付いたフォロー役の北野アナが、声をかけたことで広瀬アナも気付き、そこから、さっきの“架空実況”の方法で平均ラップを淡々と言っていき、最後の直線で馬影が見えた途端に通常の実況と同じタイミングで喋ってるのである。つまり、フォロー役が実況担当役の気付きにくい部分を、どこまで俯瞰して見てるかにかかってる訳であり、ベテラン実況アナがフォロー役をやってると、結構細かいトコまで見てることが多く、それで救われてる実況も多い訳である。しかし、フォロー役が若手だと、どうしても“先輩の実況”を邪魔したくないとか、どうフォローしていいのか“わからない”ってのが多く、それ故にチグハグな実況になることが多い。“エミネム事件”と言われる、北野アナ失脚の一因となった事案も、実はそういう“経験不足によるミス”が招いた部分も大きいのである。今回のケースでも、フォロー役が山本直アナであり、経験値からいえばフォロー役としては“未熟”であるが故に、指示ができない訳である。もちろん、函館競馬場という立地条件自体が、天候不順になるとモヤで視界不良になることが日常茶飯事って事情もあるから、実際問題として、フォロー役を責めることはできないが。

そして何より、そこが“実況の主戦コース”であるかどうかでも、影響が出る。特に北海道の2場は、毎年通っているトコといえど、中央主場である府中や中山と違い、開催時に毎週通えるようなトコではない。バイオレットSの場合、それが淀で施行されたレースであることを踏まえると、ここも中央主場の一つであり、関西の競馬実況アナなら、開催時は毎週通えるトコである。言い換えると、同じ条件下であっても、コース特性を知り尽くした場所と、タマにしか行かないがためにコース特性が“掴みにくい”場所では、感覚的に実況のしやすさは変わる訳である。だから、地元で実況してるアナならともかく、初見に近いようなトコで実況するのは、どんな手練れでも、上手く実況できるとは限らない。まして“視界不良”下での実況となれば、百戦錬磨な吉田アナですら、匙を投げるレベルである。(さらに右目にハンデがあるから、余計に実況しにくいって…)当然だが、5年前の実況マスターズでも、感覚的に慣れている地元の高橋アナに対し、関西からの参戦で、しかもこれが“初見”となった馬場アナが、どんだけハンデ背負った状態で実況してたかと考えたら、想像ができるかと思う。天候に恵まれてても、場数を踏んでいない場所での実況は、どんなにベテランであっても“経験不足”から素人以下になることもある。

以上の3点を踏まえると、バイオレットSと今回の函館6Rでは、比較にならない程のハンデがある以上、仕方ない話であり、同列で並べるモノではない。しかし、苦労したことだけはどちらも同じであり、故に明確な実況を求めるのであれば、“実況できない”程の視界不良だったことを察する読解力を持つべきだ。視界不良という“明確な情報”を実況したのだからw