迷馬の隠れ家〜別館:ブルマガバックナンバー〜

こちらは、2019年まで展開していた“ニコニコブロマガ”の保管庫です。

競馬実況は、未だに“男の聖域”なのか?

毎週金曜夜に、ラジニケで放送されている“鈴木淑子の地球は競馬でまわってる”では、久々のメディア登場となる、井口アナのインタビューを、今週から2回に渡って放送される。このブロマガ、および本家のはてダでも紹介したかと思うが、改めてざっくりと彼女に関して説明すると、中央競馬実況中継を行う放送局のアナの中で、唯一の女性アナだった訳であり、女性のスポーツ実況アナの先駆けとなった人物である。だが、所属局だったRFラジオ日本が“労務規定”を理由に、早期退職をせざる得ないという憂き目に遭い、同じ理由で“不当退職”を迫られた女性同僚と一緒に、裁判を起こした経緯がある。(この件に関しては、一応、和解済み。)しかし、彼女がいなければ、女性が競馬関係の仕事…特に競馬記者や番組MCを担当する様になることはなかったほど、競馬関連の仕事は、兎角“男の聖域”的な扱いになりやすい。ま、4年前の記事の焼き回しになるが、あの時と今では、どのような変化が起きたか、少し検証しようと思う。

最近は地方競馬でも、女性の実況アナが年齢的なことを理由にほぼ全て退役し、男性アナの天下に戻ってしまったが、これはバブル崩壊後の“後継者育成”が、開催競馬場の減少(廃止)と並行して行われなくなったことが起因してる部分であり、また、女性の実況アナを雇うにしても、技術不足を理由に養育を拒む主催者事情が見え隠れしている。以前にも解説したが、競馬を含めた公営競技は、常に金銭絡みのトラブルが付きまとう職種であり、特に実況アナの“言い間違い”は、様々なトコで大迷惑をかけることになる。故に、ラジニケのレースアナ養成講座受講生の女性であっても、なかなか“現場”での即戦力として登場する機会は少ない。当然、男性受講者もそれは同条件であり、一概には言えないトコがある…が、そもそも、競馬に限らず、スポーツ実況アナは総じて、女性よりも男性の方が、今でも圧倒的に多い。

これは何も、法律による規制緩和をもってしても解消されにくい事情が、競技そのものに存在してるトコがあり、特に公営競技の場合、女性選手・騎手が随分と活躍してるように見えても、実際問題として男性の選手・騎手の方が圧倒的に多い。そして、それ故に取材を行うにしても、女性には入り辛い環境のままになってることが遠因してるトコがあると推測される。もちろん、女性の厩務員や競馬記者もいるけど、競馬の場合、どうしても競走馬を取り扱ってる以上、体力的に非力だと仕事にならない。ぶっちゃけ、女性よりも男性の方が“体力的に保つ”という職場環境だと、必然的に女性も、それに準ずる体力と忍耐力が要求されることになる。更に、女性は生理現象として、月に一度は貧血気味になりやすい…つまり、このハンデがある以上、男性以上に無茶をしないと“仕事にならない”という訳である。

競馬の実況アナは、以前にも解説したが、パドック進行と実況席が交互に休憩が取れる環境ではあるが、レースの実況担当者は、その休憩の合間に、次のレースに出走する各馬の名前と覚える作業と、前のレースの馬名を“忘れる”作業が入る。これが、人によってはなかなかの“苦行”であり、この作業が上手くできないと、実況で大失態をやらかすことになりかねない。テレビの実況で、かつ、メインのみ集中すればいいのであればともかく、ラジニケのように全レースフル規格で実況するラジオの中継では、この作業を担当する全てのレース毎にやらないといけない訳で、さらにラジニケの場合はJRAの公式実況記録として残るため、そのプレッシャーは並大抵のモノではない。そうなると、過敏な精神の女性では、その“大役”を勤め上げる事は不可能に近い。だからどうしても、男性だけで業務を熟さざる得なくなる訳であり、仮に女性に仕事を与えるとしても、番組進行やパドック中継はともかく、実況席に座らせること自体は、リスクが大き過ぎて敬遠されがちになる。ラジニケの場合はともかく、公式実況じゃない他局の放送席ですら、総じて実況アナは男性ばかりになりやすい。

言ってみれば、過去の因習から結果的に、競馬も含めたスポーツ実況は、総じて“男の聖域”になりやすい職場であり、女性が“取材”と称してトレセンや競馬場に出入りして仕事してるのを、他のメディアが何も知らずに取材をすれば、自ずとスキャンダラスな方向で見られやすくなる…一過的な話題性のみで報じてるのであれば、これほど女性を、ひいては当該種目をバカにしてる行為でしかない。逆に言えば、そう言った“あらぬ批判”に屈せずに、目の前の“仕事”を淡々と熟せる女性が増えれば、自ずと因習を打ち消し、真の意味での“男女均等”な職場へと変貌する。ま、“取材”と称して歓楽街で、セクハラ紛いな行為さえやらなければ、お互いに気持ちよく“仕事”ができるとは思うのだが…