迷馬の隠れ家〜別館:ブルマガバックナンバー〜

こちらは、2019年まで展開していた“ニコニコブロマガ”の保管庫です。

競走馬だってガーデニングしたい?!

オイラが勤めてるバイト先のホームセンターに、土壌改良剤や元肥(もとひ:植物を植える前に土に入れる肥料)として、発酵馬糞を販売している。発酵家畜糞は、乳牛や食用鶏などのモノが一般的だが、馬糞となると、なかなかお目にかかれない…てか、流通量自体が圧倒的に少ない。近隣に乗馬クラブや競馬関連施設(トレセンや育成牧場など)がないと、原材料そのものが手に入りにくいという事情もあるが、一般的に使いどころがわからないってのも理由になってるトコがある。ま、実の話をすれば、市販されているバラ用培土や、果樹用配合肥料にブレンドされていることが多く、単品で販売されること自体が稀なのである。だが、発酵牛糞や発酵鶏糞と違って、実は有機農法を始める人には、取り扱いやすい素材なのであり、また、匂いも独特の臭みが少なく、他の堆肥との相性が良かったりする。だから、“初心者でも取り扱いやすい”のである。

さて…あまり御存知じゃない人が多いかと思うが、園芸用、あるいは農業用の肥料は、化成であろうが堆肥であろうが、全て肥料取締法という法律で定められた基準で製造されていて、特に有機肥料(法律上では“特殊肥料”というジャンルに分類されるらしい)に関しては、その“原材料”となるモノが、どこから出ているかを消費者に証明することが業者には義務付けられていて、肥料や培土の袋には、必ずその旨の表示が記載されている。で、オイラんトコ(勤務先)のホムセンで取扱っている発酵馬糞の表示には、ガッツリと栗東トレセンの住所が記載されてました…つまり、この肥料を作っている企業は、トレセン内で出る馬糞や廃棄寝藁などを回収し、サイレージで醗酵した上で製品を作ってる訳で、決して“生”ではない。(これは、衛生管理上の問題であると同時に、“生”だと成分…特に塩分が強すぎて、却って土壌汚染になりかねないから。)

また、馬糞は同じ家畜糞でも鶏糞と違い、臭いが少ないのは、そもそも飼料が穀類だけじゃないということと、牛糞と違って酵素が豊富であることがよく知られている。これは、牛が4つの胃袋で繊維質まで消化吸収してるのと違い、馬の胃袋は人間同様に一つしかない上に、繊維質が未消化のままで排泄するためであり、これが堆肥作りにおいて重要な酵素が足りるので、余分な成分(米糠や酒粕など)を加えなくても、バーク(要はウッドチップや稲わら、ヤシガラ等の植物性の廃材)と混ぜるだけで有機堆肥を作る事ができるのである。(ちなみに、農家が自作で堆肥を作る際にも食料残渣で作る場合、コンポストに米糠を入れておくのは、発酵を促すため。そのため、ほんのり糠漬けっぽい臭いがすることがあるw)

さっきもチロっと書いたが、肥料取締法によって、家畜の糞尿から堆肥を製造し販売する際は、法律に従って“原材料”となるモノは、必ず入手先の都道府県、および施設の住所を記載する義務があると言った訳だが、これは産廃処理問題と同じで、糞尿の“不法投棄”を防ぐ観点からも義務付けされている訳であり、ぶっちゃけ、消費者側からの“堆肥のトレーサビリティ”ができるようになってる。従って、パッケージに記載されている事に関して偽装行為などがあった場合、当然ながら罰則があり、最悪(てか、あまりにも悪質)な場合は懲役3年以下、または100万円以下の罰金、または両方を喰らう事になり、また、販売目的での肥料の製造に関しては、農水大臣および各都道府県知事の登録申請を行うため、不正が発覚すると、登録取消になる。(しかも、1年以上再登録禁止処分になる)そこを逆手に取れば、記載事項が本当に正しいモノであれば、発酵馬糞のパッケージに“栗東トレセン”とか、“美浦トレセン”と表記されているなら、ほぼ間違いなく中央の競走馬、しかも、様々な厩舎から集めたモノであるという事になるし、“西脇トレセン”とか“弥富トレセン”とかなら、地方競馬の厩舎からのモノとなる。つまり、キタサンブラックオジュウチョウサン等のGⅠクラス馬のモノも含まれる訳だから、あながち自分の贔屓馬がガーデニングを“手伝う”という事になる訳でw