迷馬の隠れ家〜別館:ブルマガバックナンバー〜

こちらは、2019年まで展開していた“ニコニコブロマガ”の保管庫です。

動物虐待の観点から見た競馬の話。

まず、根本的な話をすれば、人間以外の生物を育てる行為は、ある意味での人間的な傲慢さを意味する訳であり、その“目的”は、基本的には食糧の確保が前提にある…つまり、農業や養殖漁業、計画的な林業ってのは、人間が文明を確立したその時から、他の生物の生命を“生存のための糧”として消費するために行う、一番“罪深い職業”であり、だが、その“犠牲”の上に人間の生活ってのは確立されている訳であって、もし、そこんトコを理解せずに動物虐待の話をやろうモノなら、それこそ農林水産事業従事者に対して失礼千万な話である。家畜を飼うことすら虐待だというなら、悪いけど、果実や野菜を作ることも植物に対する“虐待”であり、詰まるところ、人間そのものが滅亡しなければ、この問題は解決しないことになる。しかし、人間とて自然の一部である事を踏まえれば、狩猟による過剰な搾取や伐採を避けるための“知恵”として、動植物を“育てる”事を選んだ訳であって、必要最低限度の食糧確保と、インフラ整備のために森林管理を行うことは、決して批判してはいけない事である。

ここからが本題…時折、諸外国では競馬を“動物虐待”の象徴の様に取り上げる輩がいるのだが、そういう連中の言い分は、ほぼ捕鯨反対運動と同じで、動物の生存権の主張がメインであることが多い。が、これこそ一番の勘違いで、現在の奇蹄目ウマ科に属する動物で野生種はシマウマぐらいなモノで、ほぼ現在、我々が目にするウマは、家畜種のみである。もちろん、自然放牧の状態で飼育してるモノ(特にポニー系)もいるが、基本的には牧場での飼育されたモノ以外で、見かけることはできない。つまり、多くのウマは有史以来、家畜種以外はほぼ絶滅状態であり、その代わり、家畜としてのウマは、どこの世界にいても、ほぼ確実に人間の生活に寄り添う様に存在する。そして、多くのウマは使役用(乗用・牽引など)か食肉用であって、他に活用形態はありえない。

特にサラブレッドやアングロアラブといった競走用の軽種馬は、競馬が行われているからこそ飼育される品種であり、その目的は“速く走る”ことである。ゆえに、本来の目的からすれば、“競馬を廃絶せよ”という意見こそ、本来の使命を阻害する虐待であり、生産牧場や育成牧場の経営者にとっては、到底受け入れられない言葉である。もちろん、サラブレッドやアラブも、他の軽種馬同様に馬術競技に使うことはできるが、競走馬が一般的な乗用馬として再調教するのは、子馬時代の訓致同様に時間がかかることであり、最低でも半年以上かかる。しかも、乗馬経験が浅い人が実際に乗ると、まず動いてくれないw(オイラも乗馬経験あるから言えるんだが、ウマは基本、騎乗者の熟練度を判断する習性があって、初心者や臆病な鞍上だと、それをバカにして、からかうことがあるのだ。)動いたとしても、インストラクターや厩務員がいなければ振り落とされるのがオチである。だからこそ、馬と人との“上下関係”をはっきりさせるために、様々な馬具と矯正器具が使われるのであり、それを使わずに騎乗し、走らせるのは、一般的には不可能に近い。

もちろん、人間の方がそういった器具に頼り過ぎることは、別の問題でもあり、考えなければいけない部分でもある。よくあるのが乗馬用の鞭の“使い方”が問題視されがちだが、本来、アレは音による合図が目的であって、また、鞭の種類によっては、力任せにお尻を叩くのではなく、軽く馬体(トモのあたり)に充てがう(てか、突く)様に使うことで、ウマに正しく合図を送ることができる。ゲート付近で発走委員が持って振り回してる長鞭も、基本は叩くのが目的ではなく、正しく誘導を行うための補助であって、オープンクラスの競走馬だと、その仕草を見て“レース発走前だ”と理解してゲートに入る訳である。(ま、タマにそれを無視して暴れたりするのもいるけどw)しかし、さっきも触れたが、乗馬経験が浅いと、どうしても馬の方が指示通りに動かない事を理由に焦るため、手持ちの鞭を多用する訳でありそれが原因で馬体に傷を負うケースもある。また、装鞍の際に手順を間違えたり、鞍を固定するための腹帯の締め方が緩かったりして騎乗中にズレてしまう事で、肩の付近に“鞍擦れ”と呼ばれる傷ができることもある。ウマにとって、そういうトコを何も知らずに触られると、その痛さから噛みつくことがある。(これも経験したことがあって、ガチで横っ腹を噛まれた瞬間、しばらく立てなかったw)

何が言いたいかといえば、一見すると動物虐待の様な行動でも、実際問題としてそれは、馬と人が“安全に”かつ“一緒に”行動するための“約束事”として行ってるのが、一連の所作であり、それを人間の虐待行動(ネグレクトや集団暴行など)と一緒にしてはいけない。まして、犬や猫、鳥類、魚類などの愛玩動物同様に、飼い主による管理は必須であると同時に、役目を与えて使う以上は、人間同様に休息や褒美を用意するのは当然の話である。だから、競走馬は休養のためにトレセン近隣の牧場へ放牧に出すこともあるし、栄養管理上、ニンジンや果物は“おやつ”として食べるのが普通だったりする訳である。まして、理由なく危害を加える行為は許されないことだが、“走るための合図”と単なる暴力をごっちゃにして語るべきではない。