迷馬の隠れ家〜別館:ブルマガバックナンバー〜

こちらは、2019年まで展開していた“ニコニコブロマガ”の保管庫です。

馬にまつわる“事故”話…

いやはや…今週初めからバイト先を変更し、しかも帰宅時間がべらぼうに遅くなったため、通常での更新作業をする暇がなかったのよねぇ…w ま、実際の話すれば、今月は先月の反動による影響で、不定期な更新になります。予めご了承ください。

さて、今回の話は、日吉正和調教師が事故(馬に顎を蹴られた事)による怪我からの回復が思わしくないことを理由に、10月20日付けて勇退されるというニュースにちなんで、競馬も含めた馬術一般…というより、畜産農家ならよくある“事故”に関する話。ま、基本的には馬術関連の事故がメインだが、大型家畜を取り扱う以上、ある意味避けて通れない話である。

競馬も含めて馬術をやる以上は、落馬事故は避けては通れない話であり、この事故によって半身不随や高次記憶障害(自分の行動を把握できない、次の作業を覚えてても体が動かないなど)を患う人も多い。また、落馬による頭部(または延髄)外傷が因で死亡する事もある。落馬事故の多くの原因は、騎乗バランスが崩れた事によるのが多いが、さらにその“原因”を突き詰めると、様々な要因が重なった事で発生する。つまり、一口に“落馬事故”と言っても、発生事案は様々で、単に騎乗が下手で馬に振り落とされる場合から、競技中に馬が故障(予後不良になるような大怪我など)を発生し、人馬共に転倒するといった、ある種の多重事故状態も含まれる。ジャンプレースや障害馬術(ジャンピングテスト)での落馬事故の多くは、障害飛越の際にバランスを崩した事で馬が着地の際に躓いて、その反動で鞍上の騎手が鞍から投げ出されるケースである。この場合、大概は柔道でいうトコの“一本背負”状態になるんで、咄嗟に受身が取れる人なら、最悪でも軽い打撲で済むのだが、受身が取れない状態だと、最悪背骨や鎖骨、場合によっては頸椎を損傷する事がある。オイラもかじった程度ではあるが乗馬経験があって、実際にキャンターでバランス崩して、前方向に“ブン投げ”られた事があるw うまく受身が取れたから大した事はなかったが、投げ飛ばされる角度が悪ければ、おそらく首をヤッてた可能性があった。

このほかにもよくあるのは、厩舍作業時の“挟まれ事故”ってヤツ。馬房内での作業中(馬の出し入れの際に頭絡に引き綱を着けたり、飼い葉桶を馬房内から取り外す時など)に、タマに馬体を壁側に押し付けるような動作をする事がある。この時にうっかり壁と馬体の間に入ると、丁度、通勤時間帯(おおよそ8時台頃)の山手線電車内状態になる…要は、完全に身動きか取れない状態になる。まだ、壁が木製だったり、単なる柵なら(怪我はするけど)脱出は可能だが、鉄筋コンクリートや鉄板だと、場合によっては圧死する事もある。人間のケースでは稀だが、実際、夜中に侵入したネズミや猫が、馬房内で“おせんべい”になっているケースが多いのは、馬が寝返りを打った際に、たまたまそこ(寝床)にいたために巻き込まれたのであり、寝藁(大概は稲藁)でフカフカ状態ならいざ知らず、“夜食防止”でウッドチップや大鋸屑を敷いてある場合、ほぼ直で床材とぶつかる事になるため、500kg前後の馬体と挟まれたら、ひとたまりもない。ホルスタイン等の牛もまた然りで、厩舍内の掃除を行うと、タマにそういうのと遭遇する事があるw もしも人間がそういう状況になればどうなるか、想像が堅いだろう。ちなみに、これもオイラは経験済みで、落馬した際に埒と馬体に挟まれる格好で落ち、痛みを堪えながら家に帰ったら、右半分の背中に、内出血でできたと思われる“赤い昇り竜”がいましたw

よくある事故で“最悪”なのが、“馬に蹴られる”系の事故。事故そのものは、通常だと回避可能なモノなのだが、様々な要因が重なった場合、重篤な事故に発展する事が多い。上記の日吉調教師の怪我も、馬に顎を蹴られた事によって顎の骨や頭蓋骨が折れ、それに伴う脳挫傷が起きた事により、日常生活には問題がなくても記憶障害や目眩などがあって、泣く泣く“調教師廃業”という状態になった訳である。また、蹴られる位置によっては内臓破裂は避けられない…タマに“調教中の事故で騎手死亡”とかの記事がスポーツ紙に載る事があるが、落馬以外で騎手や厩務員などが事故死する場合、十中八九がコレである。馬の視野は真後ろを除く350°だが、聴覚が優れてるため、真後ろにいても自身が認識してる人の声(担当厩務員や調教師等)がしてる限りは、警戒心無しでじっとしてる事が多いが、何らかの理由(目の前でフラッシュを焚かれたなど)で興奮してたり、自身にとって嫌な思いをさせた存在(怪我の治療で患部を触った獣医や、騎乗技術がヘタレな騎手など)が近場にいると認識した場合、力任せに後肢をフルスイングする事がある。もちろん、前両肢挙げて踏みつけるという“暴挙”に出る事もあって、こうなると巻き込まれたら最後…以前、このブロマガでオグりんが解説した通り、サラブレッドが本気で蹴れば、安っちい鉄板で作ったクルマは、ドアが完全に“瞬殺”される。それを腹部に喰らえば、真っ先に腎臓と脾臓が破裂するのは避けられない。(前肢スタンプなら、ボンネットがベコ凹むw)

大雑把だが、怪我を伴う事故の大半は、ある程度なら回避可能でも、完全に免れることはできない。だから、競馬や馬術競技者は、ヘルメット以外に胸部プロテクターを着用する事が認められていて、最悪の事態にならないよう、細心の注意を払う事が必須となっているのです。