迷馬の隠れ家〜別館:ブルマガバックナンバー〜

こちらは、2019年まで展開していた“ニコニコブロマガ”の保管庫です。

日本の馬産農業の歴史…

先週は夏バテ(おそらく熱中症)による体調不良で、更新作業を休みました…いや参ったね、熱中症対策にと大量のスポドリ摂ってても、炎天下で農作業&バイトやったら、却って内臓が冷えた分、筋肉が熱暴走してエラいめに遭いましたw(ま、今やってるバイトはそんな訳で辞めるけどさ…次のバイト先には目星つけたからいいけどw)何事も無理は禁物…歳喰うのはヤだね、踏ん張りが利かなくなるから。
雑談はここまでにして、今週は農業としての馬産の話。ま、今週ストレイトガールが引退し、英国で繁殖馬になるというニュースが出た訳だが、昔の馬産において、そういうケースは皆無に等しかった…世界の競馬、特にアメリカでは“日本は名血統の墓場”と揶揄されるほど、日本に欧米諸国で“名血統”とされる繁殖馬を輸出する行為は、手持ちの繁殖馬を“処分”するという意味があった。それっくらい、実は日本の競馬サークルは、世界からバカにされ続けた時代があったのだ。
日本の畜産業としての馬産の歴史についてざっくりと言えば、明治以降、北海道各地が開拓されていく中で、現在の新ひだか町静内地区に乗用馬の御料牧場が作られた事から本格化する訳であり、それまでは、馬の役割は使役がメインで、西洋乗馬に適した軽種馬の生産や育成は、もともと開国されるまでやってなかった。(いわゆる在来ポニー種しかいないうえに、牛が牽引する方が一般的だったからね、日本の土地柄上w)もちろん、本州でも千葉や茨城、東北の太平洋側でも乗用馬の馬産が行われたんだが、どっちか言えば他の畜産のついでっぽいノリでやってたのが殆どで、現在のような“競馬のため”ってのは、よっぽどの名門牧場の道楽程度のレベルだった訳である。こんな状況が、50年ぐらい前まで続いてた訳であり、それゆえに現在のように世界に名だたる血統背景の競走馬を輸入したくても、ビジネスとしての馬産農業へシフトしてた欧米諸国では、日本人バイヤーを酷く嫌った訳である。そこんトコの流れを変えていったのが社台グループの創立者である吉田善哉であり、ノーザンテーストの輸入から日本の競馬の歴史…血統の更新を常に行いながら、世界で活躍できる競走馬を生産し、繁殖用に輸出する環境を整えていった訳である。昨今の日本の馬産において、特にセレクトセール等の軽種馬子馬セリ市場でも海外のバイヤーが日本で、あるいはオーナーの本拠地で活躍させるために購入する姿が見られるようになったが、それもここ20年くらいの話で、それ以前は海外バイヤーが日本に来て競走馬を買い付けること自体、非常に珍しい&ありえない話だった。
もっと言えば、日本の競馬事情を考えた場合、一部の種牡馬産駒に競走実績が集中すると、多くの生産牧場がその“おこぼれ”欲しさに血統無視して生産するケースが多く、また、馬主自身も血統よりも賞金に目が眩むあまりに、人気種牡馬産駒の競走馬しか求めなくなる。その結果、馬産地における深刻な血統の偏りが発生し、それゆえの経営破綻が頻発することになる訳である。このことについて、社台の吉田総帥は危惧し、また、一部の名門牧場でもアウトブリードの重要性を考えるようになった訳である。もちろん、良血馬の血統を残すこと自体は悪い話ではない…が、真の意味での“良血馬”とは、競走成績のみの話ではなく、その後の繁殖成績や配合バランスの有無がモノを言う。つまり、馬産農業とは、将来性を見越した上で競馬を通じて、様々な可能性を探るビジネスでもあり、農業のあり方なのである。
海外での成績にも拘る流れは、本格的になったのは30年ほど前のバブル期…潤沢な資金にモノを言わせて、凱旋門賞ブリーダーズカップなどの超弩級GⅠへの挑戦が本格化し、それに合わせて海外からも、日本の競馬の賞金の良さ(特にGⅠ)に目をつけ、招待レースであるジャパンカップ以外のGⅠレースへの出走に関する門戸を開放するよう求めるようになった。ここまでにどれだけの時間がかかったか…日本ではことある毎にすぐ“凱旋門賞挑戦だ”とか“ケンタッキーダービーに出るぞ”とか大はしゃぎしてるが、海外競馬で日本のGⅠ競走へ挑戦したいと言ってるトコは、大概は香港かオセアニア地域、UAEぐらいである。騎手に関しては欧州競馬が様々な事情で存廃危機に瀕してるトコがあって、短期でもいいから日本で…というケースが増えてきてるが、馬に関してはあまり聞かない。だが、海外で日本馬が出走し、そこで大金星でも挙げれば、その様相は確実に一変する…そこを見越した上で馬主として競馬にかかわるのであれば、その“未来”に賭けて出資する行為は、よほどでない限り、どんな職種の者であっても批判される筋合いはない。そこに行き着くまでに、それに似合うだけの辛酸を舐め、弛まぬ努力を積み重ね、築き上げた歴史なのだから。