迷馬の隠れ家〜別館:ブルマガバックナンバー〜

こちらは、2019年まで展開していた“ニコニコブロマガ”の保管庫です。

競馬と地域振興のあり方について…

TwitterのTL上で、とある競馬記者のアカウントがこんなことを呟いていた。現状から言えば、競馬の興行としての売り上げ…即ち、馬券の売り上げに関しては、ネットで手軽に買える様になったことや、場外馬券場が拡充したことも受けて向上してるが、肝心の競馬場や関連施設周辺での経済波及効果が薄いという状況である。現場に行かなくても馬券が買え、ネット配信を通じてライブビューイングができる様になったのはいいが、それでは現場周辺に経済波及効果は薄れるばかりで、最寄駅や接続路線の周辺商業地が、いわゆる“シャッター街”に変貌して、ますます賑わいが薄れることをも意味する。正直、この問題は公営競技全般に言える話で、せっかく興行収益が良くても、周囲が寂れたら、それこそ本末転倒である。
以前にも取り上げたかと思うが、競馬に限らず、公営競技や他のスポーツでの興行に伴う、開催地の経済効果は、興行そのものの成果にもよるトコがあり、その最たるモノがオリンピックを始めとする世界規模の国際大会であり、僅か数日間の開催期間で、場合によっては財政赤字を一気に帳消しすることができる。事実、8年前に園田競馬場で行われたJBCは、それまでの兵庫県競馬組合が抱えていた累積赤字を一発で解消させた実績があり、また、園田駅周辺、および、阪急神戸線沿線の飲食店に観客が流れたことにより、一時的ではあるが、活況になったのは言うまでもない。つまり、開催現場への来場者数が増加すれば、それに似合うだけの経済効果があり、ひいては周辺地域の経済振興を活性化させることもできる訳である。当然だが、その分の税収が見込める訳であるから、行政も商店街も“winwin”の関係になる。また、開催地周辺に乗り入れる公共交通機関も、開催地が盛り上がれば上がるほど、輸送力の増強と路線の拡充を模索することになる。
しかし、そのためにはそれに似合うだけの事前準備…整備事業が不可欠となる。その整備事業の中には、防災目的の都市再開発も含まれるため、ライフライン関係の共同溝(電気や都市ガス、水道、通信インフラを一つにまとめて、幹線道路などの地中に敷設するやり方。)設置や景観保全のための整備、鉄道と道路を立体交差させる工事(高架あるいは半地下化など)なども同時進行で行う必要がある。特に交通インフラの整備は、最低でも10年先を見越した整備が重要となる。単に車線拡幅や立体交差化と言っても、それに対して沿線住民が納得し、協力(用地確保のための立ち退きや接収など)をつけられなければ、どんなに必要な公共事業だとわかってても頓挫するのは目に見えている。事実、オイラんトコで行われている国道25号バイパス事業
(通称:たつたみちプロジェクト)ってのも、現行のルートが対面通行&歩行者通路が未整備なモンで、しかも大型車が西名阪を嫌ってガンガン走ることもあって、三室山付近から分岐して、大和郡山市付近まで片側2車線の整備された道に付け替えようというモノなのだが、現時点では計画の1/5すら進んでいない…理由は、東側の住宅地内にある計画地周辺の住民が立ち退きを拒否してることと、その言い分が、通行車両の騒音や排ガスの増加を挙げてることである。西側はほとんどが耕作放棄された農地だったことや、整備することで現行ルートに残った歴史的建造物(古民家)の保全ができることもあって、サクサクと進んだのだが、法隆寺駅周辺の住宅地エリアの一部では、上記の理由で駄々捏ねてる住民がいて、用地買収すら進んでいない。言い分はごもっともでも、奈良県斑鳩町で賠償補填を行うと言っても、頑なに拒否してるから、計画が半分、頓挫してるのである。(立ち退き協力による、土地取得などに関する税優遇があるってのになぁ…)
話が逸れたので元に戻すと、小倉競馬場の周辺整備の一環として、北九州モノレールの整備事業をJRAが負担したのは有名だが、同じ理屈は、公営競技を行う自治体でも同じで、園田競馬場周辺の道路整備や無料送迎バスの負担は、兵庫県競馬組合兵庫県自身が行っていることであり、それを請け負っている阪急バスと尼崎交通局から移管した阪神バスにとっても、園田競馬場へ足を運ぶファンが増えないと、増便にかかる経費を請求しにくくなる。また、交通の便が悪いがゆえにクルマで来場しやすいように、競技場周辺の駐車場を整備するにあたっても、
接続する幹線道路の交通量、及び、瞬時に処理できる能力が限られると、結果として開催時に途方もない交通渋滞を引き起こすことになる。阪神競馬場の場合、近くに中国道インターチェンジがあるとはいえ、そこに接合する道路自体が対面通行区間ばっかで、開催の度に周辺に大渋滞が発生する。駐車場が大きくても、それに対応した道路でない以上、渋滞が解消されることはない。だから、“来場には公共交通機関を使え”という話になるし、そのための整備事業に、該当する鉄道会社と主催者、さらには自治体や国も巻き込まざる得ないのである。そして、周辺の商店・ショッピングモールの協力も必要なのであり、駐車場を提供するだけでなく、そこでお金を気持ちよく落としてもらえる工夫がなければ、結果的に経済活性化計画自体が失敗することになる。京阪淀駅が現行の位置へ移設となった際、周辺商店街は猛反発した…その理由が、競馬ファンが“商店街に立ち寄らなくなる”からだった。だが、交通量的に立体交差にしないとヤバい踏切があり、ただでさえ道幅狭いトコだったこともあって、結局泣く泣く商店主たちが応じた訳で、その代わり、一部店舗は競馬場寄りに移転したり、合同の利用者サービスを導入するなどして、なんとか維持している。単に、自治体や主催者に頼るのではなく、地元商店街だからこその工夫や啓発行動も必要である。それが上手くかみ合えば、必ず経済活動は活発になるし、本当の意味でのインバウンド…内需拡大は見込めるのである。それに対して反発してる理由はどこにある?初期投資以上の収益が見込めないと最初っから嘲笑ってるのは誰だ?失敗を活かさずに成功する事例など一つもない。地域振興の一番の要は、現行の“観光資源”をいかにして活かし、どう発展させるかである。