迷馬の隠れ家〜別館:ブルマガバックナンバー〜

こちらは、2019年まで展開していた“ニコニコブロマガ”の保管庫です。

月月・日日の鍛練が、自分の使命を切り拓く。

今月12日まで、京都駅にある美術館“えき”で開催されている武豊展に行ってきた。デビューから30年という節目を迎え、なおかつ、今でも最前線で活躍してる凄腕なのは言うまでもないが、その展示パネルの中に、この人の“本当の強さ”を見出すことができた…

“今の自分を超える自分になる”

これ、実は多くのアスリート…特に若くして世界トップクラスの成績を誇る人達全員が異口同音で発してる言葉にして、その請願に立って精進してるからこそ、今の結果に結びつくことを意味してる。宗教絡みの発言で申し訳ないが、日蓮宗系の宗教団体に属してるなら、この御金言を知らない人はいない…
“月月・日日につより給えすこしもたゆむ心あらば魔たよりをうべし”
                   (聖人御難事より抜粋)
要約すれば、「常日頃からの精進に励みなさい、少しでも慢心があれば、それをきっかけに没落する…」という戒めの言葉である。と、同時に、自身の鍛練は過去の自分からの成長を促すことを意味する。つまり、自分が培った栄光も、直面した苦難も、全て自分が選び、乗り越えた“結果”だからこそ受け入れられる訳であり、だからと言って“過去”に縋るのではなく“打ち破る”ために、挑み続けることを意味する。だからこそ、現役にして中央競馬通算3800勝以上の勝ち鞍を誇り、中央のGⅠタイトルにおいても、朝日杯フューチュリティーS以外は、一つ以上勝ってきた訳である。デビューから30年の地道な積み重ねが、揺るぎない金字塔を次々と打ち立てた証左である。
同じ理屈は、競馬実況アナにも言える話で、周囲から認められる存在へと成長するには、どんなレースを実況するにあたっても、経験不足なんてのは後からでも身に付くモノであって、経験豊富なベテランであっても、実況で失敗することは日常茶飯事である。過去の“名実況”と言われるモノに自惚れ、自意識過剰な実況アナほど、己の未熟さを戒めず傲慢になりがちであり、その結果、自らのミスが原因で双眼鏡を置かざる得なくなる。逆に、常に研究熱心で、自分をとことん鍛え上げようと現場で、あるいはスタジオで鍛練に余念がない人ほど、たとえ最前線から身を引いた存在であっても、その経験を後進に教え、自らもサポートに入ろうとする。当然だが、身体的に一線を引かざる得なくても、経験と知識を活用できる場がある以上、次世代を担う人材を育成する使命を請け負うことはできるが、生涯現役で活動したいのであれば、それこそ陸続と現れるエース級の実力者と戦い続けなければならない。
話を戻すが、確かに、デビュー当時は父親…武邦彦という“ターフの魔術師”という存在があり、その後光による影響もあったと批判するかもしれないが、自分の親が、業界における“偉大なる存在”だからこそ、子供としてその姿に憧れ、“先輩”として見習い、そして“勝ち超えるべき目標”として見てきたからこそ、人一倍の精進を怠らなかった…だからこそ今の姿がある。それゆえに、若かりし頃は所属厩舎の兄弟子たちに可愛がられる反面、多くの反感を買う出来事に遭遇することも多々あった訳であり、勝負の世界であるからこそ、一度レースで馬に騎乗する以上は、人間的な情に流されるようでは生き残れない。だからこそ、国内のレースで辛酸を舐めたことも、自分の居場所を求めて海外へ武者修行を行ったこともある。その積み重ねと、必ず巡り来る機会を逃さずに挑み続ける勇気と度胸が、全ての結果に結びつくのである。もっと言えば、自分自身が妥協せずに精進し続ける意思がある以上は、どんな結果であっても受け入れられるし、他人から見たら不幸な事に思えることでも、それを幸福に換えることもできるのである。同じ結果であっても、それを“幸運”とするか否かは、自分次第である。だから、常に周囲から注目される存在でありながら、一歩も引かず、臆することもなく、前へと進み続けることができるのである。その結果が、今日の姿である。
一口にベテランと言っても、本物の“実力者”というモノは、日々進化し続ける。過去の実績や栄光なんてのは、それまでの結果であって、現在進行形ではない…そこを勘違いして自惚れていたら、成績が向上するどころか、余計に低迷する事になる。同じ自惚れるのであれば、それに似合うだけの結果を受け入れ、そこから自分がどうしたいかを考え、行動に移すことである。最初はその道の先輩にバカにされることを恐れるだろうが、それは誰もが通る道…自分が後進に対し、自分が受けた屈辱を与えるか、それとも、落ち込む相手に叱咤激励を行うかは、
自分自身の深層心理一つで決まる。嫌われ者として我を通すのも、八方美人として愛想を振りまくのも、自分自身の胸算用…そこんトコをキチンと理解し、また、学び続けてるからこそ、強いのです。勝負の世界じゃ、精神的にタフじゃなかったら生き残れませんからね…