迷馬の隠れ家〜別館:ブルマガバックナンバー〜

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生え抜きと中途採用の“格差”とは?

NHKマイルCの週に放送された“うまきんⅢ”で、番組ディレクターとしてスタジオでガサゴソしていた小塚アナが、今回がGⅠ初実況となる大関アナに対する渡辺アナの態度に対して「俺の時はそんな事なかったのに」という旨の発言をしたのだが、これにはある意味事情がある。それは、“生え抜き”と“経験者”の違いである。ぶっちゃけ論でいえば、自前で育成した人材なのか、他方で実践を踏んできた人材なのかの差である。
“生え抜き”とは、アナウンサーとして所属放送局以外での勤務経験がなく、かつ、専門分野以外の業務も含めた研修は、すべて所属局、あるいは系列主管局で受けた者を指す。つまりは、“純粋培養”された存在であり、放送局の特色を受け継いだアナウンス技術を持つ事になる。ただし、基礎の部分からの育成となると、流石に時間がかかるし、現場経験が浅い分、非常時での対応ができなくて、本番中にもパニック状態で喋るハメになる。だから、実況デビューでも慎重になり、特にラジニケの実況はJRAでの“公式記録”でもあるため、失敗は許されない。(記録映像用の実況は、後からスタジオで録り直しになる…過去の重賞レース映像が流れる際、変な違和感があるヤツは、当時の現場音声ではなく、大概はスタジオでの録り直しである。)
逆に“経験者”としての中途採用者は、アナウンサーとしての技能や経験は、以前の所属局でやってきてる分、現場における“即戦力”としての位置付けがある。そのため、入社後からのデビューも早く、問題がなければ入社(移籍)後、最速半年で“競馬中継デビュー”という事になる。ただし、“生え抜き”と違って、以前の所属局での“クセ”が付いている事が多いため、どうしても変な“違和感”を生じる事も多い…一番わかりやすいのは、先日のケンタッキーダービーなどでの海外競馬中継において、現地コメンテーターとして蜂谷アナが登場した際、長年MBSの実況アナだったクセがどうしても抜けないため、ラジニケの通常の中継で聞き慣れているとヘンチクリンな“違和感”を覚えたかと思う…それをと同じで、以前にも解説したかと思うが、在籍年数が長ければ長いほど、以前の所属放送局の習性が抜けなくなる。ゆえに、移籍するタイミングが早い人ほど“クセ”が補正されやすいが、遅すぎると、その“クセ”が却って味になる場合もある。(そこんトコは、ある意味リスナーの好みだろうけどw)
話を戻して解説し直すと、小塚アナの場合は舩山アナや米田アナ同様に中途採用組であり、元はFNS系の仙台放送所属である。相対して、大関アナはラジニケの“生え抜き”である。中途採用と言っても、雷神様…もとい、中野アナの場合、全く畑違いな職業からの転職であり、半分“生え抜き”である。だから、社局としての期待度は、自ら育成した存在の方が、無限の可能性を秘めていると認識される訳であり、そしてGⅠ実況までに時間がかかったのは、重責を担えるだけの度胸と経験を積ませる必要があったからである。
まして大関アナの場合、入社早々からイレギュラーの連続であったのは言うまでもなく、東京本社所属でありながら、デビュー時から関西での番組進行と実況であったのはご存知の通り…GⅠ実況に関して、ラジニケは大阪支社勤務経験の終盤か、東京へ戻ってからである。入社から10年も経過してと思われるが、逆を言えば、公式実況ではない放送局と比較すれば、そのプレッシャーはハンパない…だからこそ“生え抜き”に対して時間をかけ、できるだけ大舞台において“失敗しない実況”ができる職人を育成するのである。だからこそ、他局が半年〜1年で“初鳴き”を行うことに対し、ラジニケの競馬実況アナは、たっぷり時間をかけて育成してる訳であり、そこんトコは中途採用者に対しても同じではある…が、やはり“即戦力”として採用してる以上、それに似合うだけのアナウンス技術が要求される訳であり、その分のハンデがあるのは否めない。これはいずれ、山本直アナ自身も体験する事であり、彼の場合は今後を踏まえると、かなりのプレッシャーになると思う。中途採用でも、大阪支社に転属となった米田アナの場合、喉に“爆弾”を抱えてる状況では、競馬記者としての仕事はできても、本文である“競馬実況アナ”としての技術を、さらに向上させるのは難しい。ご存知の通り、米田アナは転属前から競馬実況のローテーションから外れている。実況中に“原因不明”な息切れを発症してるからだ。(一部のファンから「気胸では?」という嫌疑がかけられている…)これが改善されない限り、実況アナとしての復帰は難しいのは言うまでもなく、最悪、早めの“交代”もあり得る。それは当人も自覚してるだろうから、できるだけ放送席に座り、番組進行の業務に徹してると言っていい。これが“生え抜き”であれば、半年以上でも休養させて体制を整えさせられるのだが、仮にも放送現場の経験者である以上、しかも、福島で重賞実況の経験もある以上、技量的な部分でのハンデとして、どんな状況でも喋り続けなければいけない…自分自身を“プロ”として自負してる以上は当然である。
待遇を均一化しろと巷では騒いでる輩がいるようだが、こういう“格差”は、双方が抱えるハンデがある以上やむない部分であり、仮にそこを改めた場合、“生え抜き”はどんどん会社を辞めることになるし、“経験者”はそれ故に、ブラックな対応をせざる得なくなる。組織として役割に“格差”が生じるのは、それ故の“期待”でもあり、ハンデをできるだけ小さくしようと思えば、却ってそういう“調整”が入ることになる。それが“組織社会”というモノであり、そこに文句を言うのであれば、個人レベルでできる全てを習得すべきである…軍隊や宗教団体といった組織は、自己完結ができる組織として様々な分野の人間が集う場所である。故に様々なスキルを分担し、その役割毎に人員を割り振る。それを専門分野に特化したのが企業であったり、個人商店であったりする訳である。そういったことすらわからない人ほど、真の意味での“格差是正”から遠ざかる発言しかできないのである。