迷馬の隠れ家〜別館:ブルマガバックナンバー〜

こちらは、2019年まで展開していた“ニコニコブロマガ”の保管庫です。

馬術競技は競馬の“基本”なりw 技術編

競馬において、いわゆる“モンキー乗り”という騎乗技術は、今でこそ一般的なモノになったが、日本でコレが一般的になるには、戦後、保田隆芳騎手のアメリカ武者修行以降の話である。しかし、この“モンキー乗り”ってのは、あくまで騎乗スタイルが、まるで“おサルさんが馬の背中にしがみついてる”ように見えるからそう言われるだけで、実は、基本の騎乗技術が出来てないと、全く話にならないほど、バランス感覚と内腿の筋力が重要になる騎乗方法である。
先月、テレビ大阪で放映されている“おとな旅あるき旅”という番組で、栗東周辺の特集をやってたんだが、出演者の三田村邦彦と斎藤雪乃が、トレセン近くの馬具屋で騎乗フォームを練習する木馬に試乗する場面があったんだが、時代劇などで馬に騎乗する機会がある三田村と、そうじゃない雪乃ちゃんでは、全く話にならないほどの差が出ていた。乗馬経験者や中型以上の自動二輪に乗る人なら、内腿に力を入れて股を絞める事は、騎乗時の基本として習う事が多いんでできなくはないが、そういう経験が乏しいと、そこから膝を伸ばす事すらできない。もっと言えば、中腰の状態で体の位置を保持する事すら難しいのである。
では、競馬で“モンキー乗り”が一般的に普及する以前は、どういう騎乗方法が普通だったのか?答えはいたってシンプル。普通の馬術競技と同じスタンダードライディング…通称“天神乗り”が常識だった訳である。つまり、“モンキー乗り”とて、基本姿勢である“天神乗り”ができてないと話にならないのであり、乗馬経験が全くない素人が、いきなり騎手と同じ騎乗姿勢で馬を御する事は、不可能に近い…仮にできたとしても、重篤な落馬事故につながりかねない。
“天神乗り”での基本操作は、膝と腰を使って、馬の動きに合わせて上半身を上下に動かす。この際に内股気味に力を入れる事で、鎧にしっかりと体重が乗り、背筋が伸びた状態で御する事ができるのである。また、軽速歩(いわゆるダグ)の際にお尻を馬の動きに合わせて跳ね上げるように動かす事で、馬の負担を軽減させる事ができる。この一連の動きは駈歩(いわゆるキャンター)までは、ほぼ一緒である…襲歩(ギャロップ)となると話は別で、天神乗りでコレだと、馬もさる事ながら、人間の方が大変w(ガチでケツ痛い…) そこで“モンキー乗り”という訳である。コンパクトに体を屈めることで、膝にかかる負担は大きくなる反面、襲歩でも基本動作を崩す事なく行えるのである。また、空気抵抗が“天神乗り”に比べて小さくなるため、走行速度が速くなり、馬の負担も大幅に軽減できる。こういった事から、現代の競馬の世界では“モンキー乗り”の方が主流と言っても過言ではない。
手綱や鞭の使い方も、馬術競技のそれと違う点を挙げれば、“モンキー乗り”だからこそ、その重要性は変わってくる。ぶっちゃけ、“モンキー乗り”だと、鎧の位置の関係でチョーカー(拍車)が使えないからこそ、鞭での合図の出し方一つで指示を出さないとマズいのである。だから、競馬では騎手が無闇矢鱈と鞭で馬体を叩いてるかのように見えるが、大概は馬体を叩いてはいない。特に馬の顔の横で鞭を振るうのは“見せ鞭”と呼ばれるモノで、見せ方によって方向変換を行ったり、ラストスパートの合図として行うのである。“見せ鞭”を行った後で、馬の尻を叩く訳であり、その目的も速度を上げる合図として、音を立てる手段としてである。だから、有能な競走馬ほど“見せ鞭”だけで走る事ができる訳であり、ヘタレな騎手ほど鞭を頼りすぎて、競走後に馬体にヘンな擦り傷を負わせてしまうのである。手綱の持ち方も、基本は両手で持つモノなのだが、競馬の場合、最後の直線で鞭を多用する事もあって、ウェスタンライディングに近い格好で手綱を持つ事が多い。ちなみに、ウェスタンライディングでは、手綱は左手で纏めて持ち、右手を常に空けるのが基本で、ロープなどの作業用具を持った状態になる事が多い。(ロデオマシーンでも、上級者が左手で鞍の取っ手を握るのは、そういう習慣だから。)
次回は“勝負服”にまつわる話w 余談だが、オイラの手元にはレプリカといえど競馬で実際に使われてる素材と同じモノでできた“勝負服”を持っている。(某パチンコメーカーの懸賞で当てたヤツだが…w)