迷馬の隠れ家〜別館:ブルマガバックナンバー〜

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馬術競技は競馬の“基本”なりw 用具編

競馬学校に入学する者の中には、乗馬経験がほぼ初心者ってのもいたりする。近年は一応、乗馬クラブのジュニア(小中学生対象)クラスで、乗馬の基礎を学んだ上で入学するケースも増えてるが、そもそも、競馬の騎手になるためには、馬術の基礎技術としての騎乗姿勢や手綱による馬の制御法などを学ぶ必要がある。当然だが、競馬学校騎手課程の授業には、馬術の基本練習も含まれている。特に、馬具の取り扱いについては、馬に乗る以上、誰しもが一度は学ぶ分野であり、これがわかってないと、人馬ともに非常に危険な状態に陥る。
まず、馬装の中でも最初に手にすることになるのが、ヘルメット。競馬で使われるヘルメットは、騎乗馬の枠色(これは日本だけのルールらしい…)や勝負服(海外ではこっちが主流)に合わせるために、本体とカバー部分が分離する型式になってるが、実は素材そのものは通常の乗馬用と同じで、軽量化と衝撃を和らげる目的で、芯材に発砲スチロールが使われている。これに、特殊シェルコーティング(外側になる部分を硬化する処理)を施し、人工皮革や牛革などで覆って作られている。だから、落馬事故で頭部へのダメージを軽減するために割れやすい反面、工事現場等で使われる工業用ヘルメットと違って、意外とカッチリした作りのモノが多い。(その代わり、夏場は結構蒸れるw)だから、育成牧場やトレセン内などでミニバイク用のヘルメットの代わりに被ってる人もいる訳だが、これはあくまで道交法で定める公道上じゃないからこその話であり、そのまんまトレセンの外に出たら、当然、道交法に基づく反則切符切られますw
競走用の鞍は、いろんな意味で“お飾り”みたいな形状ではあるが、通常の乗用鞍は、馬体上部を覆う形状になっていることが多く、取り付ける際は鞍の下に腹帯を付けて巻く訳だが、必ず、腹部に確実に取り付けないといけないのは、どの鞍でも同じ。(てか、間違って取り付け位置を前側にしようものならば、馬の肋骨に当たって、思いっきり痛がる。中には痛さに耐えかねて、作業中の人間の横っ腹噛んでくる…冗談抜きでw)正しく取り付けられた状態の鞍は、よほどでない限りズレることはないのだが、締め付けが甘かったり、鞍と帯のサイズが合ってないと、騎乗中の衝撃によって、あっちこっちズレることになる。こうなると、馬体に鞍ズレによる傷がつく様になり、馬自体が非常に痛々しくなる。そこで、鞍下には通称“座布団”と言われる緩衝材を付ける。これは競馬でもゼッケンの下に付けていて、騎手が検量する際は、“自分の体重+鞍や鎧(あぶみ)を含めた馬装の重量”で、騎乗前後に行う訳である。ここでの誤差は、夏場でも発汗量による増減を加味しても100g前後…通常の乗馬ではそこまでの体重制限などはないが、競馬の場合はレースごとに斤量が変わることもあり、また、少しでも軽い方が調整しやすいこともあって、競走用の鞍は通常の乗馬用に比べてペラペラな作りになる訳である。ちなみに、通常の乗馬用の鞍は、鎧をつけた状態で5kg前後するんだが、競走用のは、どんなに重くても500gと超軽量である。(で、斤量調整用の重りは、鞍や腹帯の下とかに仕込む訳で…ry)
乗馬用のブーツは基本、1cm程度のヒールが付いていることが多いが、これは、鎧にしっかりと引っ掛けるためのモノであり、そこんトコは騎手が履いてるブーツも同じ。但し、さっきもちょっと触れたが、斤量制限がある関係で、素材が非常に軽いモノが多い。また、ウェスタンライディングをやる場合だとチョーカー(拍車)を踵とアキレス健の間の部分に取り付ける場合もあるが、馬の腹部に踵を押し当てると、馬は前へ動き出す習性を利用してるためで、反応が鈍い場合、その補助としてチョーカーを使う訳である。鞭に関しても同じで、基本的には単にお尻を叩くのではなく、叩く“音”を使って指示を出すのが本来の使い方であり、手綱で方向や減速、飛越などの仕草を指示し、鞭とチョーカーで加速を促すのが、乗馬での基本的な制御法であり、それを高速走行で行うために特化したのが、騎手の騎乗体制と言っていい。次回は、そこんトコの解説も行おうと思う。