迷馬の隠れ家〜別館:ブルマガバックナンバー〜

こちらは、2019年まで展開していた“ニコニコブロマガ”の保管庫です。

南海春木駅の憂鬱…

今でこそ、岸和田競輪場の最寄駅で、周辺の宅地化開発が進んでいる、南海本線春木駅。しかし、今から40年以上前は、ここは“競馬の町”でした。線路を挟んで山手側…国道26号へ向かう途中の閑静な住宅街と、岸和田徳洲会病院や簡易裁判所があるエリアに存在する、岸和田市中央公園…ここに、かつて大阪府営の競馬場…春木競馬場がありました。10年ほど前にグリーンチャンネルで放送されていた(現在も昼間の無料放送時間帯に再放送中w)“競馬ワンダラー”という番組でも紹介されて、当時の放送を見た人ならご存知かと思うが、競馬場としての痕跡は、公園内にわずかに残ってるだけで、当時の面影を辿るには、色々と面倒くさい状態である。
番組内でも紹介されていたが、高度成長期の泉州エリアは、それこそ、競馬場の収益は非常に羽振りが良かった訳で、だけどそれゆえの“問題”も抱えていた訳である。園田競馬場周辺を巡った事がある人なら御察しの通り、周辺が宅地化していった事によって、競馬場がある事が、いろんな意味でマイナスイメージにつながっていた訳で、今でこそ廃棄物の処理システムが充実して悪臭を放つ事は少なくなったと言えど、馬の飼育による獣臭は、周辺住民にとって、一種の“公害”でした。そして、当時の大阪府は、公営競技に対して冷遇してたトコがあり、特に開催コストが非常にかかる競馬よりも、施設の規模が最小で済み、スタンドの構造が廃止後でも転用しやすいなどの面から、競輪に力点を置くようになった訳である。ま、一番の原因は住之江に公営競技の施設が二つ(競輪とボート)もあった事であり、そのとばっちりを受けたのが春木競馬と言っていいだろう。
で、この大阪府の無茶振りに振り回されたのが南海の春木駅で、駅の構造上、競馬場があった山手側に改札を集中させていたため、これを海手…つまり、競輪場側に設置し直さなければならなかった。今でこそ、競輪場側に駅の施設自体は集約されているが、和歌山・関空方面ホームの片隅には、定期やICカード利用者用改札と、臨時切符売り場らしきモノが残っている。地元の人ならともかく、初見の人だと、なんでこんな奥まったトコに改札があるのか訳ワカメだろうが、これは明らかに、ここに競馬場があった名残である。しかし、この光景もいつまで残っているかわからない…というのも、実は南海は現在、本線の連続高架化工事をやっている最中で、計画では、関空〜難波を全線高架に切り替えようという話がある。すでに岸和田駅泉大津駅などの高架駅への切り替えが完了していて、浜寺公園駅も、辰野金吾が設計した木造駅舎を廃して高架にしようという計画がある。(ただ、あの駅舎自体は、新駅舎の前に移築するらしいが…詳しい事はこちらを参照してくれ。)当然ながら、この計画の工事区間には春木駅も該当する訳で、工事の進捗次第では、この風景は消える事になる。立体交差でクルマの往来に関する交通事情は良くなる反面、かつての賑わいを振り返る貴重なロケーションは、時代とともに消えようとしているのである。ま、仕方ないっちゃ、それまでなんだが…