迷馬の隠れ家〜別館:ブルマガバックナンバー〜

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サラブレッドが人工授精をやらない理由…

バレンタインデーだってのに、下ネタ系でスンマセンw と言っても、馬の繁殖に関する話なんだが…先週木曜に、ステイゴールドが大動脈破裂で死亡した訳だが、繁殖に上がった競走馬が事故死するケース(今回の場合は病死だが)は、現役時代以上に多い訳で、放牧中以外で頻発するのが、いわゆる交配作業中(要するに“種付け”w)でのトラブルである。もちろん、細心の注意を払って交尾を行う訳なんだが、それでも人間で言うトコの“腹上死”ってのもある訳で、その多くは、やってる間に大動脈や心臓にトラブルが起きて…ってヤツである。そう、サラブレッドだって、高血圧による血管トラブルで死亡することはあるって事だ。

で、そういうリスクを少しでも回避したいを考えるのは、畜産業を営む農家なら誰しもが思うことであり、実際、食肉用の牛や豚の繁殖は、人工授精が一般的であり、繁殖用の精子を種畜場で冷凍保存して、必要に応じて手持ちの家畜に受精させていく訳である。(当然だが、種畜となるオスは、ほとんどの場合メスと交わることなく、一生ダッ●ワイフで自家発電する訳で…w ちなみにメスも、オスと直にやりあうことがない訳で…)

しかし、競走馬…特にサラブレッドに関して言えば、未だに“自然交配”を行うことが“お約束”となっている。これは、厳格な国際ルールがあって、どんなに“大量生産”したくても、人工授精による“弊害”を避けなければならないからである。つまり、人気種牡馬以外淘汰され過ぎると、血統的な近親交配による身体的な障害が出る可能性が高いからである。人間でもそうだが、近親者同士での婚姻関係が認められない最大の理由は、遺伝子異常による障害が出るからであり、同じ理屈がサラブレッドの場合、通用する訳である。もちろん、ワザと近親交配状態(インブリード配合)にして競走能力を向上させる考えもあるんだが、あまりやり過ぎると、血統的なバランスが歪になりすぎて、次の繁殖用に使えないケースも出てくる。だから、成績がイマイチでも、生産上の観点で、血統的な配合バランス調整用に繁殖に回すことがあり、逆に、人気種牡馬の産駒で成績が優秀であっても、繁殖用に回せない“理由”もここにあって、単にGⅠ勝ちがあったとしても、乗馬用に回される競走馬がいるのも、実はここの問題だったりする。特に日本の馬産に関して言えば、競走成績で物事を見る馬主や牧場関係者が多い事もあって、どうしても、特定の血統に偏りがちになる。現在の血統は、圧倒的にサンデーサイレンス系の繁殖馬が多いため、そのアウトブリード(外部血統)の繁殖馬が貴重な存在となる。ゆえに毎年、海外から種牡馬繁殖牝馬を輸入する訳であり、競走馬として海外から買い付けて輸入するケースも、基本的には、重要な役割なのである。

もちろん、それゆえのデメリットとして、交配を行った後で体調不良になることもあるし、やってる最中に興奮しすぎて蹴られたり、双方が暴れて倒れるなどの事故がある。だけど、他の家畜の様に人工授精を認めないのは、事故よりも“血統の正当性”を明らかにする事が主眼にあり、また、インブリードの多用を避けるためにも必要な措置なのです。そういう意味では放牧地で、牡馬と牝馬を分けるのも、不用意な繁殖行為を避けるためであり、事故防止の観点からも、乗馬クラブでも牡馬と牝馬の馬房は、できるだけ距離を置くようにしてるのです。(でないと、牝馬の匂いが残った馬房にうっかり牡馬を入れると、興奮しすぎて馬房内で暴れますから…冗談抜きで。)当然ですが、競馬場でパドック周回中の競走馬が興奮するのも、2歳馬や3歳馬の場合は、場の空気に不安を感じてそうなるのだが、古馬の場合はおおよそ、かすかに残った牝馬のフェロモンに反応して、いわゆる“馬っ気”を出すのですw