迷馬の隠れ家〜別館:ブルマガバックナンバー〜

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競馬とメディア

今でこそナイター開催や、ネットによる馬券発売で、経営黒字化が顕著になってる地方競馬だが、今から20年前は、それこそ多くの地方競馬が経営改善ができずに、相次いで廃止に追い込まれた…中には、行政そのものが公営競技の開催意義を履き違え、ただ単純に“公序良俗”と“品行方正”という錦の旗を振りかざして廃止に追い込む方向で、経営改善を放棄した事案もあるほどで、惨憺たる状況が続いた。そんな中で、あれこれとメディア戦略を練り、なんとかして生き残りに躍起だったのが南関4場…特に大井と川崎であった訳で、現在でもTCKは、事ある毎に競馬場施設や騎手、果ては所属競走馬まで引っ張り出して、バラエティー特番の盛り上げに一役買う活動をやっている。


そもそも、競馬に限らず国や自治体が主催する公営競技は、その主たる開催目的は、税収の補填である…ただ、あくまでそれは、刑法にある“富くじ・賭博の禁止”という規定に対しての“例外事案”としての話であり、競馬法の規定で、競馬の開催の主旨は、畜産農家の保護と牧場経営の助成である。特に、家畜伝染病の防疫は、時として牧場経営をやめざる得なくなる程の経営損害を受ける…その経営再建や、対策のための費用を助成するために、農林水産省が運営を許可してるのがJRAであり、中央競馬の開催主旨に則して、家畜馬の飼育・活用を取り組む事業所に対して、厩舎整備や飼料購入の助成金を支給してる訳である。

地方競馬も、基本的には主催自治体の税収補填であり、本来は戦災復興に関しての都市整備費用捻出と、生活保護を必要とする貧困家庭の支援費用である…都市部や観光地の競馬場は、それこそ来訪者や労働階級の娯楽という側面もある訳だが、辺鄙な田舎(と言うと語弊があるが…)の競馬場は、それこそ、労働者…特に坑夫や捕鯨漁師の就労ストレスを発散させる場としての役目があって、高度成長期の頃は、それこそ何のメディア戦略なしでも活況だった訳である。これが一変するのが、いわゆるオイルショックと言われる“資源不況”である。


今ほどではないと言えど、今から46年前…アラブ諸国が加盟するOPEC(石油輸出機構)が、アメリカの大手石油会社の横暴な要求に対抗すべく、産油量の制限と価格を吊り上げた事によって、石炭から石油へ移行していた日本がモロに影響を受け、多くの業種で“省エネのため”という口実で操業制限を受けた訳で、これをきっかけに関西圏では、火力から原子力発電主体の電力供給にシフトしたとも言われてる。

話が逸れたんで元に戻すと、この不況とプラスして、世界中から捕鯨に関する批判(乱獲の疑い)が相次いで、南極海洋での商業捕鯨が事実上潰された事で、捕鯨基地だった高知や、炭鉱の城下町にほど近い中津や荒尾、岩見沢、北見等の地方競馬は、軒並み赤字運営に陥った。この中で唯一生き残った高知競馬は、多くの競馬関係者とファンの危機感が下支えとなり、また、話題作りに躍起になってたトコに、ひょんな格好で“救世主”が現れた事で、全国メディアから取材が来て、さらにネット環境を味方につけた事で、息を吹き返した好例なのだが、他の廃止に至った競馬場は、多くの場合、その時代の流れに乗る前に体力尽きて消えた…その多くが、メディア対応が貧弱で、むしろ地元住民が“公営競技イラネ”で傾いた事で、全廃したと言っていい…ただ、その反動でどうなってるかは、御察しの通りだ。


メディアの報じ方は、時として公営競技を生かすも殺すも自在であり、エンドユーザー(=消費者)に対しての訴え方、情報提供のあり方一つで存廃問題はいつでも起きる。しかし、大概の場合は一方的な意見による感情的なモノであって、冷静に判断したら、大した問題ではない事をm、さも大事の様に騒いでる者達に踊らされた結果の悲劇でしかない。だが、一番肝心な事は、事の本質を理解した上で、様々な意見に“乗るか反るか”である…ここに、命運を分ける“大博打”が存在するのに、ギャンブル全般を嫌う人は、駅前のパチ屋や商店街の雀荘よりも、公営競技廃絶を訴える。このダブルスタンダードに対し、競馬中継に携わる関係者の多くが、同じ放送局の別部門(特に報道)に何度イビられたやら…また、バラエティー系番組の制作現場は、様々なタレントが公営競技を楽しんでる様を目の当たりにしてることもあって、是非とも参加して欲しいと競馬関係者に声をかけて、いざ番組制作開始…となった途端、編成からのクレーム(半分は報道局社員からの嫌がらせ)で、頓挫する事の方が多かった。中央競馬の場合でもこういう状況が長年続いた事を踏まえると、地方競馬が苦労しても報われないまま潰されていった背景は、自ずと理解できるであろう。



馬ではハイセイコーオグリキャップという、トップスター候補となった存在を輩出したといっても、地域のみならともかく、全国に競馬場の存在と名前が売れるには、中央競馬で結果を残さないとメディアが取り上げない訳で、ハルウララよりもウズシオタローの方が遥かに偉業だったのに、益田競馬場が廃止になったのは、中央へ向けた活躍馬がいなかったことや、元よりアラブ専門の競馬場だった事が仇となった部分があり、そして主催者である自治体自体の“財政難”そのものがトドメを刺した…改善策があっても、そこにかかる負担が大きいと、累積赤字を理由に却下されるのは目に見えてる上に、メディアが行政の“不都合な部分”を一切報じずに責任を公営競技の開催そのものに押し付ければ、世論が廃止を求めるのは自然の流れである。




だからこそ、地方競馬のこれ以上の廃止を食い止めるためにも、関係者は躍起になってる訳であり、ネット媒体などを通じて、様々な情報を発信するプラットフォームを利用して、売上アップを図ってるのである。その一環として、競馬場公認のゆるキャラが登場したり、バラエティー特番で施設の一部をレンタルしたり、様々なジャンルのコラボが行われる様になったのである。ただ…ちょっとやり過ぎなモノが昨今、目立つ様になってしまったのは如何なモノかと頭抱えることもある様だが…w