迷馬の隠れ家〜別館:ブルマガバックナンバー〜

こちらは、2019年まで展開していた“ニコニコブロマガ”の保管庫です。

馬に想いを託して…精霊馬にまつわる話。

お盆最終日、いかがお過ごしでしょうか?昨今の“精霊馬”の画像検索すると、まぁ…ユニークなモノが結構ございまして、きゅうり農家をやってる身としては、「丹精込めた作物でふざけんな(褒め言葉)」と、ツッコミが入る訳で…w

では本題…“精霊馬”といえば“きゅうりの馬になすの牛”が定番なんだが、それには農家的に“理由”がある…この時期はウリ科とナス科の旬であり、いろんな意味で有り余ってる訳である。しかも、収穫のタイミングがちょっとでも間に合わないと、とても市場へ出荷できないほど品質が落ちやすい。故に、食品”としての価値より、造形素材として使うこともあるって訳である。だから、きゅうりやなすを“供物”として捧げるというより、馬や牛に見立てて飾る“造形物”として墓前や仏壇前に置く訳である。で、一般的にはきゅうりやなすの形を活かして、割り箸や小枝を4本刺して馬や牛に見立てる訳である。

でも、なんで“馬”と“牛”である必要性があるといえば、あくまで推測ではあるが、乗用家畜として親しみがあることが大きい。特に、農家にとって馬や牛は、それこそトラクタやコンバインなどといった農業機械が登場する以前は、重要な動力源であり、“家族”でもあった…だからこそ、身近な存在として各家庭にいた訳であり、先祖を送迎する“乗り物”として、最上のモノとして用意するなら、馬や牛の方がふさわしいという訳である。また、迎えは馬で、送りが牛なのも、一般的だと“愛しい人”に“早く逢いたい”からこそ、早く走れる馬を、“愛しい人”と“別れるのが辛い”からこそ、足の遅い牛を、それぞれ用意する…とされる訳だが、牛だって本気で走れば、サラブレッドほどの早さは出なくても、瞬間で60km/hは出すことだってできる。だから、図体が大きいという理由のみで“牛は遅い”というのは、ある意味間違いであり、馬だって大型種であるクライスデールやペルシュロン等も、軽種馬の様に早い速度で走ることはできない。(だから、ばんえい競馬の速度は、サラブレッドのレースと違って早さがない代わりに、斤量を積んだ鉄橇を牽引する“パワー勝負”のレースとなる。)

時代は移ろえど、故人・先祖を思い、その御霊を丁重に扱う気持ちがある限り、精霊馬を用意してお迎えし、送り火とともに霊山へ送り出すという風習は、日本らしい夏の風物詩として、これからも続いていくでしょう…ちなみにオイラん家の仏前(オイラ所有の仏壇の前)には、この時期は競走馬ぬいぐるみが大挙に鎮座してますが、何かw