迷馬の隠れ家〜別館:ブルマガバックナンバー〜

こちらは、2019年まで展開していた“ニコニコブロマガ”の保管庫です。

外国人騎手に関する話。

すでに報道でもご存知かと思うが、今年3月1日付けて、ミルコ=デムーロ騎手とクリストフ=ルメール騎手が、JRA騎手としてデビューする事になった。もちろん、これは法改正によって、外国人であっても期間限定な短期免許ではなく、正規の騎手としての資格を取得する試験を受けられるようになったからであり、今後彼らは母国であるイタリアやフランスの“外国人騎手”ではなく、“日本競馬の騎手”として、中央や地方交流レースに、通年で騎乗できることを意味してる訳である。(つまり、今後、日本の騎手リーディング争いにも関わってくるって事で…ま、ニュースソースはコチラw)
では、外国人騎手が日本の競馬に参戦するようになった経緯はなんなのか?ぶっちゃけ論で言えば、海外遠征を計画している日本のホースマン達の技術向上や情報収集という名目があって、その一環として、国際交流(招待)レースとしてジャパンカップが施行され、さらに騎手の腕を純粋に競う場として、今年から札幌で開催されることになったワールドスーパージョッキーシリーズがある。(あれ自体は、暮れの阪神でやるから面白いんだけどと小一時間…w)しかし、一番の問題なのは、騎手の“参加基準”と騎手免許の取り扱いである。これは、競馬開催国によって、取得に必要な規定がバラバラであると同時に、国際的に統一された、明確なルールそのものが存在しない事が、事情をさらに複雑にさせていると言ってよい。
短期免許に関して言えば、今から20年ほど前に規制緩和が行われ、母国(所属開催国)でのリーディング上位であることや、日本の競馬関係者(主に馬主)が身元引受人である事などを条件に、年間で最長3カ月(但し、クラシック戦線でのスポット騎乗などの例外事案アリ)で日本の競馬での騎乗が可能となった事を受けて、まず最初に、オーストラリアの女性騎手、リサ=クロップが“短期免許第一号”となった。で、欧米諸国の競馬のシーズンは、殆どの場合、冬場がオフになりやすいこともあって、多くの外国人騎手は、この冬場にスケジュールを見計らって、短期免許を取得するケースが多いのである。今でこそ、欧州競馬関係者は、冬場にUAEへ厩舎まるごと移動して、そこでやることもできるようになったが、あの当時は、北半球で通年競馬を行っているのは、日本と香港ぐらいでしかなかった…だからこそ、多くの欧州の騎手たちが、冬場の“食い扶持”を求めて、日本や香港での騎乗を求めてた訳である。
で、この初期のルールでの“不都合”が、モロに出たのがネオユニヴァースの“三冠レース”でのゴタゴタである。そう、皐月賞優勝後にデムーロ騎手を“主戦”に据えたために、免許の“期間延長”をどうするかで、相当論議がモメたのである。そこで、NAR(地方競馬全国協会)の短期免許資格を利用して、ダービーまで日本に留まり、宝塚記念菊花賞は“GⅠ特例”として、臨時の免許を交付した訳である。これが実は、外国人に対しての騎手免許に関するルール作りを促すきっかけとなり、また、短期免許に関する取得条件も、免許保有期間を3ヶ月一括ではなく、騎手の都合に合わせて、年間最大で3ヶ月という方向へ切り替えた訳である。んでもって、今回の“通年で日本の競馬に騎乗可能”という状態になるには、欧州での競馬事情と、騎手免許試験の“グローバル化”が不可欠と言っていい。
特にイタリアは、いわゆる“リーマンショック”以降の金融不安で、財政が非常にヤバヤバな状態に陥り、EU(欧州連合)加盟各国からの金融支援の“条件”として、かなりの緊縮政策を強いられていることもあって、その影響が、日本と同じように公営競技として行われている競馬にも出てきてる訳である。(ま、貧困層の僻みで、いつも真っ先に犠牲になるのは、娯楽・遊興系産業になるのは、ある意味お約束な訳で…)ぶっちゃけ、本国での開催が危ぶまれ、収入も不安定ならば、新しい“仕事場”を探すのは、その道のプロなら至極当然な話で、しかも、当人が大の親日家であるとなれば、その“主戦場”を日本にしたいのは、すぐに考えがつく。しかし、一昨年までJRAは、騎手免許取得の規定を、“日本人のみ”にしてたんで、どんなにリーディング上位でも、通年での日本での騎乗は事実上不可能だった。それを緩和して、とりあえず日本での騎乗経験があること、日本語が通じる事などを条件に、受験資格を緩和したから、彼らは試験を受け、そして今回“合格”となった訳である。
そういう意味では、実は地方競馬の騎手が、JRAの騎手免許の試験を受けて、免許を切り替えるケースがあるのだが、これに関しての解説は、他の人もやっているのであえて割愛するが、
重要なのは、海外や地方で腕のある騎手が、わざわざJRAの騎手になろうとする背景には、所属する地域や国の“財政事情”が絡んでいて、それゆえに、収益が非常に安定している(とされている)日本の中央競馬甘えてる…もとい、憧れると言っていいだろう。とは言え、これで“蒼い目のサムライ”が今後、日本馬の背に跨って、海外競馬でも大暴れしてくれると、競馬を見てるこっちとしては、非常に面白くなる気がするのだが。