迷馬の隠れ家〜別館:ブルマガバックナンバー〜

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水難事故と法律の話…

本家でも一度、ライフジャケットの着用に関して解説をやったかと思うが、ここでは、一昨日発生した海自輸送艦おおすみと遊漁船の衝突死亡事故を受けて、改めて解説を行おうと思う。

事故の詳しい事は、他のメディアに任せるとして、基本的に、マリンレジャーを嗜む者であれば、救命胴衣(ライフジャケット)の着用は、自分の身を守る上で常識である。特に、プレジャーボート水上バイクに乗る人だけでなく、磯や防波堤、沖合での遊漁船からの船釣りをする釣り人でも、自助の観点から、救命胴衣を着ける事が、全日本サーフ協会等の通達で、遊漁船でもレンタルしてる程である。一応、国交省でもこんなページを作って呼びかけている訳だが、それでも徹底できていないのが実情である。

それは何故かと言えば、あまりにも水上交通やマリンレジャーに関しての関心が薄い事や、法律による規制を知らない人が多いからである。もっと言えば、教育現場や学習要項に、水遊びの注意点を教える機会がないからである。

いわゆる釣行雑誌でも、昔はライフジャケットの重要性を書いた記事は、どこにも見当たらなかった。しかし、オイラのオトンの知り合い…ま、所属してる投げ釣りクラブの会長だったんだが、頻発する水難事故を期に、テストアングラーとして契約してた釣具メーカーに呼びかけ、釣り人にもライフジャケットの着用を呼びかけた。(もちろん、自分トコのクラブ会員に対しても、ロゴ入りのヤツを自腹で配給した。)この事が一部の雑誌に取り上げられて以降、海釣りのテレビ番組でも、テロップで呼びかける様になった訳であり、それ以前は、完全にノーマークだった。実は、遊漁船でライフジャケットが未装備だったりするケースが多いのは、釣り客自身が最初から身に着けている事を前提に、装備品から省いているケースもある為で、これ自体、別の法律で(遊漁船の適正化に関する法律)で、浮き輪や救命ブイ等、ライフジャケットの代わりになる救命具がある場合は、業者が準備してなくてもいいとなっている。しかし、ひとたび水難事故で死者が出た場合、事故を起こした遊漁船業者は、各都道府県の業者団体や知事の命を受けた調査官等から査察が入り、場合によっては廃業せざる得ない状況に追い込まれる事になる。(特に不正が発覚した場合、懲役3年以下、300万円の罰金が科せられる。)

今回の事故、場合によってはこの“別件”による摘発もあり得る訳で、海自に非があったとしても、死亡した船長自身が法令違反を行っていた(不正な登録をしてた、あるいは別の業者から名義を借りた)場合、被疑者死亡のままでの書類送検は免れない。つまり、マスメディアが報じるべきは、むしろそっちであって、海自の批判ではない…ここが重要である。相手の船舶が、仮に軍艦でなくても大型で、衝突回避が難しい場合、小型船舶の方に衝突回避の義務が生じる。そして、遊漁船業を営む者は、必ず船籍がある都道府県知事に営業の届け出を行う義務がある。このふたつの義務を怠った時点で怪しむべきであり、農水省(遊漁船業者は漁業者扱い)と国交省(小型船舶免許の管轄)が共同で対応すべき事案である。だから、海自が事故原因究明の捜索に協力するのは当然であると同時に、遊漁船業団体も、その調査内容を開示する義務が生じる事になる。つまり“モグリ”の遊漁船だった場合、起こるべくして起こった事故だという事になるからだ。